ベンチャー企業から大企業まで、チームづくりは常に大きな課題となる。新型コロナウイルス対策とともに広がったリモートワークをはじめとする柔軟な勤務形態は、メンバー間のコミュニケーション方法に新たなスタンダードをもたらした。

 確かな成果をあげる能力を備えた「次世代型チーム」をつくるためには、メンバー同士が「伝わるコミュニケーション」をこころがけることが重要になる――。

 そう説くのは「最も成功したオウンドメディア」といわれるサイボウズ式編集長・藤村能光氏。同氏の著書『《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方』(扶桑社)より、本文の一部を引用する。

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「事実」と「解釈」を分けて考える

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 そういったとんでもない量の情報にさらされるからこそ、相手がどのように情報を受け取るかを意識し、ていねいなコミュニケーションを心がけないといけません。対面や電話でのやりとりとは違い、コミュニケーションの媒介となるものが文字しかなく、五感でのコミュニケーションが困難だからです。

 文字中心のオンラインのやりとりでは、書き込み方ひとつで誤解が生じてしまったり、相手の書き込みで嫌な気持ちになったことは、誰にでもあるはずです。本人はおそらく思ったことを書き込んでいるのかもしれませんが、内容が攻撃的に感じられたり、読んだ人を傷つけることもあります。僕も、オンラインのコミュニケーションで他者の書き込み内容に心がざわめき、眠れないぐらい気になってしまったこともあります。

 ただ、その書き込みをした人と実際に話をしてみると、書き込み内容に他意はなく、あっけらかんとしていたりします。書き込みの文面から感じた攻撃的な印象は全くなく、対面でのコミュニケーションは至って普通の場合が多いのです。夜も眠れないぐらいに悩んでしまった時間と、消耗してしまった気持ちを返してくれと言いたくもなります。

伝わるコミュニケーションは「マナー」

 書き込みの内容ひとつとっても、受け取る相手のことを思いやり、その人に伝わる形で文字にしてあげることは、多種多様なツールを日頃から使っている現代人にとって必要なマナーではないかと思うのです。そして、それがスマホを使った文字主体のコミュニケーションになるときは、なおさら心がけておくべきです。

『《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方』

 ちなみにサイボウズでは、コミュニケーションの際には「事実と解釈を分けて伝える」という考え方を心がけています。オンラインコミュニケーションは、やりとりを続けるなかで、どうしても解釈が膨らみがちです。事実はひとつであるのに対して、解釈は人の数だけ存在します。解釈が中心となったディスカッションは、水かけ論になってしまうことが多いです。一度傷つけられた感情はしこりとなって、相手を正しく理解することを妨げます。

 それではいい関係性が築けません。解釈を中心に議論しだしたら、解釈ではなく事実に基づいて話を進めるようにします。

 問題解決には、事実へのアプローチが不可欠なのです。