「法務省が人事案を持って来た」の時系列
思い出してみよう。首相は15日に櫻井よしこ氏のネット番組で、黒川氏の定年延長は法務省が提案したのかと問われ、
「全くその通りだ。検察庁も含め、法務省が『こういう考え方でいきたい』という人事案を持って来られ、われわれが承認するということだ」
と明言した(東京新聞5月18日)。
さらに《官邸の介入に関し「それはもうあり得ない」と強調した》。
しかし1月31日の定年延長の閣議決定には「前段」がある。5月23日の読売新聞が詳しい。
記事から時系列をまとめてみる。
・昨年末、法務・検察が官邸に上げた幹部人事案は、2月に定年を迎える黒川氏を退職させ、東京高検検事長の後任に林氏を据えるというものだった。
・官邸がこれを退けた。
・すると法務省幹部は稲田氏に2月で退任し、黒川氏に検事総長の座を譲るように打診した。
・稲田氏は拒んだ。しかし稲田氏が退任しないと、2月が定年の黒川氏は後任に就けない。
・法務省は「苦肉の策」として、国家公務員法の規定に基づいて黒川氏の定年を半年延長する案を首相に示した。←ここ注目!
いかがだろうか。安倍首相の言う「法務省が人事案を持って来た」は最後の部分ということがわかる。ここしか時系列を説明していない。不都合な前段には触れていない。
現政権には朝ご飯を食べたのかと聞かれ、パンを食べたのに「ご飯(米)は食べてない」と答える「ご飯論法」が以前から指摘されるが、ここでもまた同じ逃げ方をしていた。
まだある。
黒川延長&検察庁法改正案にこだわったのに
同じく読売を熟読すると、
「国家公務員法改正 首相、廃案も視野」とも(5月22日)。
え、あれだけ黒川延長&検察庁法改正案にこだわったのに廃案も視野?
理由に驚いた。
《自民党の世耕弘成参院幹事長は、新型コロナウイルス感染拡大で民間企業が苦しむ中での定年延長を疑問視している。首相は世耕氏の発言に触れ、「そういうことも含めてしっかり検討していく」と述べた。》
世耕氏の発言は5月19日である。ということは世耕氏や首相が「コロナで民間が苦しんでいる」ことに気づいたのは先週ということなのだろうか。ま、まさか……。