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「すごいプレッシャーですよ」ドラフト指名された棋士が語るチーム戦“勝利の重み”

「すごいプレッシャーですよ」ドラフト指名された棋士が語るチーム戦“勝利の重み”

将棋棋士にチーム戦について聞いてみたーー前編

2020/05/29
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 また、今泉四段はアマチュア時代に職団戦へ参加した経験があり、朝日杯のプロアマ一斉対局はアマの立場としてもプロの立場としても戦っている。

「職団戦と今回のAbemaTVトーナメントで、自分にとって一番の違いは、(職団戦では)大将を任されたことですね。大将としての期待を背負っていた面はありますし、ですから『自分も勝つから君たちも勝てよ』という雰囲気も出していました。やはりチームのためにという思いがありますから、戦い方が個人戦とは違ってきます。負けるにしても最後まで投げないということなどでしょうか。大将としての姿は見せられたと思います」

 朝日杯については「アマチュアの時は、自分だけでなく他の皆にも頑張ってほしいなという気持ちがありました。10局中、アマ側の3~4勝を目指していた感じですね。ところがプロになってからは、プロ側が1-9でも、その1が自分ならばいいという感じです(笑)」と語る。

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竜王戦開幕に立ち会った小島一宏さん

 今泉に限らず、朝日杯のプロアマ一斉対局に関しては、アマ側には連帯感のようなものがあるのに対し、プロは完全な個人戦というのが、現場で取材したときの実感である。

2011年7月2日の朝日杯プロアマ一斉対局のワンシーン。左側手前が菅井竜也八段、左奥が佐々木勇気七段 ©︎相崎修司

 朝日杯のアマチュア参加枠が10人と大幅に増加し、一斉対局が始まったのは2001年だが、それ以前にアマチュアが多数参加したプロ公式戦といえば竜王戦だろう。第1期竜王戦の開幕戦が行われたのは1987年の11月13日。その日に参加枠4名のアマチュア選手のうち、3名が対局を行っている(東京2局・大阪1局)。

 竜王戦の開幕に立ち会ったアマ選手のひとりであり、指導者としてもプロ棋士を育てた小島一宏さんに話を聞いた。

「私は先崎さん(学九段)との対局で、隣が森内(俊之九段)―小林(庸俊アマ)戦でしたか。ものすごく緊張したのは覚えています。ただ、僕と小林君しかいなかったこともあり、団体戦というイメージはなかったです」

 小島さんは現在、日本将棋連盟埼玉県支部連合会の会長として普及及び後進の育成に当たっている。その指導のもとからプロ棋士になった一人が高野智史五段だ。小島さんの手掛ける教室の師範を木村一基王位が務めていたことから、木村門下となったのだ。

「真剣勝負の団体戦は久しくやっていなかった」

 高野五段も今回のAbemaTVトーナメントに出場しているが、2005年に始まった文部科学大臣杯 小・中学校将棋団体戦、その第1回の優勝チームのメンバーでもある。「当時の高野君は強くなるちょっと前という感じでしたね。まじめで着々というタイプでした」と小島さん。一方の高野五段は「正直、まったく覚えてないんですよ。小学6年だからチーム戦の重みが分かっていませんでした。自分が勝てばいいや、というくらい。個人成績は4勝2敗だったような……」。

2019年10月28日の新人王戦第3局にて。高野五段(右)の戦いを見守る小島一宏さん(中央右) ©︎相崎修司

 AbemaTVトーナメントについては「団体戦が行われると聞いても『ふーん』というくらいで、正直メンバーに選ばれるとは予想していませんでした。知らせを聞いたときはビックリして、断ったほうがいいのかとも思いました。でも、そのあとに選ばれた喜びが湧いてきて、頑張ろうという気持ちになりましたね。プレッシャーは個人戦よりも大きいですが、勝った喜びもより大きい。真剣勝負の団体戦は久しくやっていなかったので、不思議な感じですね」と語る。

 高野五段は三浦弘行九段率いる「チームミレニアム」のメンバーとして、決勝トーナメント進出を果たした。

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