昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

特集観る将棋、読む将棋

斎藤慎太郎八段が語る、チーム戦では「敗勢の場面でも投げきれない」理由とは

将棋棋士に団体戦について聞いてみたーー後編

2020/05/29

 現在の将棋界では第3回AbemaTVトーナメントが大きな注目を集めている。ドラフト会議による指名を経たことで、各チーム3名によるTwitterアカウントやプロモーションビデオが「ステイホーム」期間中の将棋ファンを盛り上げている。

タイトルホルダーとA級棋士合わせて12名がチームリーダーとなった(AbemaTVより)

第2回将棋電王戦に出場した、塚田泰明九段

 さて、AbemaTVトーナメント以前にプロ棋士が指した団体戦と言えば、ドワンゴが主催していた将棋電王戦である。棋士対将棋ソフトによる5対5の対決だ。第2回将棋電王戦(団体戦形式としてはこれが初)に出場した、塚田泰明九段に話を聞いた。

「団体戦と言えば小学生時代に、職団戦へ出たことがあります。当時はまだ色々と緩かったんでしょうね(職団戦は同一職場から5人でチームを組むトーナメントなので、学生・児童は参加対象ではない)。『と金の会』というチームで、私も含めて子どもばかりでした。藤森君(哲也五段、塚田門下)のお祖父さんに誘われたと記憶しています。子どもなので疑問に思わず指していましたね。もっとも参加が認められたのはその1回で、次からはダメになりました」

「チーム戦だったから」なりふり構わぬ指し方で

 そして、第2回将棋電王戦が行われたのは2013年。阿部光瑠四段、佐藤慎一四段、船江恒平五段、三浦弘行八段(段位はいずれも当時)とチームを組んだ塚田九段は、事前に将棋ソフトをかなり研究した上で対局に臨んだという。

第2回将棋電王戦でコンピューターソフト「Puella α」と引き分けとなった塚田泰明九段(左)。右端は同ソフトを開発した伊藤英紀さん ©︎時事通信社

「電王戦では、私は他のメンバーと比較しても団体戦の意識が強かったんじゃないかと思います。自分が負けてもチームとして勝てばよい、その逆もしかりですね。結果としては1勝3敗1分で、厳しい現実を突きつけられたわけですが、1勝2敗で迎えた第4局で私が何とか持将棋に持ち込めて、最終戦を勝てば引き分けにはできるという状況を作れたのはよかったです。今回のAbemaTVトーナメントは、戦いを見守っているチームメイトの姿が面白い。タイトル戦の控室があのような感じでしょう」

 将棋ソフト「Puella α」と戦っていた塚田九段は、必敗形に追い込まれていた。控室ではあるベテラン棋士が「投了を促してくる」とまで言ったほどである。それでもなりふり構わぬ指し方で持将棋に持ち込んだのは、チーム戦だったからだ。

 終局後のインタビューでは「自分からは投了しない、と」と答えて涙を見せた塚田九段。ニコニコ生放送の動画中継を見て、その姿に感銘を受けた視聴者の数は少なくなかったはずである。