昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

特集観る将棋、読む将棋

「栃木にはこんな戦法はない!」地方出身の棋士が全国大会でビックリしたこと

「県でひとりだけ棋士・女流棋士」座談会 #1

2020/05/22

 都道府県ごとの棋士の出身者数には、思った以上に偏りがある

 プロの棋士になるためには、棋士の養成機関である奨励会で四段まで昇段する必要があり、その対局は東京と大阪にある将棋会館で行われる。このため、どうしても同地に通いやすい都道府県出身の棋士が多い。事実、もっとも棋士が多いのは東京都、ついで大阪府、兵庫県、神奈川県という順になっている。こういった傾向は、やはり都心部の研修会などで対局を重ねてデビューする女流棋士にも、同じようなことがいえる。(全2回の1回目/#2に続く)

将棋「観る将になれるかな」会議』(扶桑社新書)より

東京や大阪の棋士とは異なる経験がある?

 ただ、東京と大阪から離れれば、それだけ棋士が少なくなるというわけでもなく、たとえば北海道出身の棋士は15人もいるが、沖縄県出身の棋士はひとりもいない。これは、将棋は室内で行うため、降雪量が多く冬季に室内で遊ぶことになる東日本に多いという事情もあるという。また、当該地域での普及活動の多寡など、いろんな要因が重なり合った結果でもありそうだ。

 棋士・女流棋士と都道府県ごとの出身数には様々な因果関係があり、棋士が少ない県の出身者は、東京や大阪の棋士とは異なる経験があると耳にする。そこで、今回はそんな経験談をお聞きできればと《「県でひとりだけ棋士・女流棋士」座談会》を行なった。文字通り、現在、県下においてたった一人の棋士もしくは女流棋士による鼎談である。

それぞれのお住まいからZoomで

 出席いただいたのは、まず1994年栃木県小山市生まれの長谷部浩平四段。2018年4月に四段デビュー。栃木県出身の棋士は永沢勝雄八段以来の2人目で、戦後初、81年ぶり。

長谷部浩平四段 ©︎日本将棋連盟

 

 続いては1996年愛媛県松山市生まれの黒田尭之四段。2019年4月に四段デビュー。同県出身の棋士は森信雄七段以来の2人目で、こちらは43年ぶり。なお愛媛県出身の女流棋士には、山根ことみ女流二段がおり、二人は同じ高校に通っていた間柄だという。

黒田尭之四段 ©︎日本将棋連盟

 最後に1999年佐賀県佐賀市生まれの武富礼衣女流初段。2018年2月に女流2級。佐賀県出身の棋士・女流棋士は、武富さんが史上初めてだという。

武富礼衣女流初段 ©︎日本将棋連盟

 なお今回の座談会は、コロナウイルスの影響で外出ができないため長谷部四段は栃木県から、黒田四段は愛媛県から、武富女流初段は現在の住まいである大阪府からZoom(ビデオ会議)でご参加いただいた。この座談会は、なかなか一堂に会する機会がなくタイミングをうかがっていたのだが、こういう情勢ゆえに実現した企画ともいえるだろうか。

どれくらい親しいですか?

 まず、本題に入る前に参加いただいた三人の距離感、つまりどれくらい親しいのかを聞いてみた。みなさんはプロ入り時期も近い。

――武富さんと長谷部さんは面識があるんですか?

武富 お話しするのは初めてですよね?

長谷部 初めてです。でも、いろいろ関東の棋士からうかがっています。

武富 それ怖いですね(笑)。絶対それいい話じゃないでしょう。

長谷部 いやいやいや(笑)。いい話しか聞いてないですよ。司会進行がすごくうまく礼儀正しいって。

武富 本当ですか。一回もお話ししたことないのに噂だけ聞いているって怖いですね(笑)。

長谷部 本当にいい噂しか聞かないですよ。

武富 それはよかったです。ふふふ。