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連載池上さんに聞いてみた。

池上彰氏が解説「中国に損害賠償を求める『コロナ訴訟』の行方」

池上彰氏が解説「中国に損害賠償を求める『コロナ訴訟』の行方」

池上さんに聞いてみた。

2020/06/01
note

Q 「コロナ訴訟」はどうなる?

 新型コロナウイルスの感染拡大の責任は中国にあるとして、政府などに訴訟を起こし、損害賠償を求める動きが広がりました。もし裁判が行われて判決が出た場合、効力が生じる可能性はあるでしょうか?(40代・男性・会社員)

A 国家に賠償を強制できるシステムはありません。

 相手が国家ですと、拒否をすればおしまいです。国家に賠償を強制できるシステムはありませんし、国際機関もありません。

 また、感染拡大の責任が中国にあることを法廷で認めさせる、あるいは証拠を突き付けることは、まず無理でしょう。中国が調査に協力していないからです。これでは裁判に勝てません。

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習近平国家主席 ©︎ロイター/AFLO

 たとえばアメリカのどこかの裁判所が、中国政府の誰かを法廷に召喚して被告人質問をしようとしても、中国は誰も出席させないでしょうから、裁判にならないでしょう。それでも、裁判長が「中国政府が出席を拒んだから責任がある」として損害賠償を認める可能性があるかもしれません。

 でも、中国はこの判決を認めませんから、原告が「アメリカ国内の中国政府の資産を差し押さえてほしい」という訴えを起こし、裁判所がこれを認めた場合は、大騒ぎになるでしょう。

 以上は、頭の体操として想定可能な仮説を立てただけですが、どう考えても、中国政府が損害賠償するとは思えません。

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