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「リカバリー(recovery)」は、広義にはマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、熱回収をまとめて指している。なんらかの形でプラスチックごみを有効利用している。

 リデュース、リユース、リサイクルの頭文字をとって「3R」とよばれることがある。プラスチックにかぎらず、ごみを減らすための心がけを示している。まずはごみを減らし、再利用し、そしてリサイクル。この順でごみの減量を心がけましょうということだ。

世界の波に乗れなかった日本

 さて、海洋プラスチック憲章の話に戻ろう。この憲章では、2030年をターゲットにして、プラスチックごみ削減の目標値を世界の先進国が共有しようとしたが、それに米国と日本は加わらなかった。

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 米国は、地球温暖化を抑制する方策について世界が合意した「パリ協定」からの離脱を決めた国だ。地球温暖化の原因となる二酸化炭素を中国についで2番目に多く出しながら、その抑制に取り組む枠組みから離脱した米国。そして、海洋プラスチック憲章でこの米国に同調した日本。日本もまた、米国とおなじく、地球規模の環境問題への取り組みに消極的な国だという印象を与えた。

 日本は海に囲まれ、むかしから海の恵みを受けてきたのに、なぜ海洋プラスチック憲章に署名しなかったのか。その批判に対し、政府は18年6月、「国民生活や国民経済への影響を慎重に検討し、精査する必要があるため」と正式に国会の答弁書で述べている。

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 プラスチックごみ問題をなんとか解決しなければならないという世界の流れは、いまに始まったものではなく、15年6月にはドイツで開かれた主要国首脳会議で「海洋ごみ問題に対処するためのG7行動計画」が策定されている。15年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」でも、海洋ごみを含む海の汚染を25年までに防止するとうたっている。SDGsでは世界が協力して解決すべき17の目標を掲げているが、その具体的な提案は30年を目標年としたものが多い。

それでも環境問題を直視しない日本

 さらに、「海洋中のプラスチックの重さが2050年までに魚を上回る」というショッキングな推定が話題になったのは、16年1月の世界経済フォーラム年次総会。なにより日本は、その年5月に三重県志摩市でみずからが主催国となって開いた主要国首脳会議で、「海洋ごみに対処する」と首脳宣言に書き込んだ。

 海のプラスチックごみ問題に急いで対処しようという世界の流れは、こうして15年ごろから高まっていた。それなのに、海洋プラスチック憲章についての政府の答弁書は、ようするに「まだよく考えていません」「業界など各方面との調整が終わっていません」という趣旨だと国民に受け取られてもしかたのないものだ。日本が世界の波に乗り遅れていることをあらためて印象づけることになった。

 そしてこの答弁書では、世界の20か国・地域が参加して19年6月に大阪で開かれる予定の首脳会合(G20)で海洋ごみ問題に取り組みたいとも述べている。

 日本が世界と歩調を合わせそこなっていたあいだに、世界の国々は、ストローなどの使い捨てプラスチックやマイクロプラスチックについての規制を強めていった。