「一所懸命がんばります」では実効性に欠ける
海洋プラスチック憲章にくらべて具体性に乏しいという指摘もあった。憲章には「100%」「55%」「50%」などの数値目標が掲げられていたが、G20の首脳宣言や関連文書は、世界が共通の目標とすべき数値に乏しい。海洋プラスチック憲章に加わらなかった日本政府が、みずからがホスト国となるG20では、こんどこそ世界をリードする数値目標を提示するのではないか。そんな期待をよそに、「一所懸命がんばります」では実効性に欠けるのではないか。しかも目標は50年だ。さきほどのWWFジャパンなどの批判は、その点をついている。
もっとも、日本がプラスチックごみ問題に対し無策だったわけではない。事実、プラスチックごみのリサイクル率は、ヨーロッパ諸国なみの3割を保っている。
ごみのリサイクルについては、その種類ごとにいくつものリサイクル法が定められている。たとえば、使い捨てのプラスチックごみになりやすい包装や容器についてリサイクルを義務づける容器包装リサイクル法は、1995年に制定されている。不用になったテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンについては、98年に制定した家電リサイクル法で、メーカーにリサイクルを義務づけている。これはプラスチックごみを対象としたものではないが、家電製品には多くのプラスチックが使われており、間接的にはプラスチックごみ対策といえる。
2000年に制定された循環型社会形成推進基本法は、使い捨て社会から脱するための基本的な姿勢を定めた法律で、まず取り組むべきはごみそのものを減らす「リデュース」、そして「リユース」「リサイクル」、それでもだめなら「熱回収」というように優先順位を示している。
このように、社会の実情にあわせて新法を追加したり修正を加えたりして、ごみの減量と処理に取り組んでいる。
意識改革の遅れは「ガラパゴス化」が要因か
それにもかかわらず、日本の取り組みが遅々として進んでいないようにみえるのは、やはり世界の流れに乗れていないことが背景にあるのではないか。ごみ事情は国によって違うので、世界の国々とおなじことをするのがベストとはかぎらないが、たとえばレジ袋の規制や有料化にしても、各国が次々に導入を進めているなかで、日本はやっと20年7月にスタートさせる。「どうせやるなら、なぜこんなに遅くなるの?」というのは、ごくふつうの市民感情だろう。
日本政府のさまざまな取り組みには、世界の流れに背を向けて、ときに「ガラパゴス化」と揶揄される独自路線をとる傾向があることも、国民に疑いの気持ちを抱かせている原因かもしれない。
たとえばエネルギー問題。11年の東日本大震災で東京電力の原子力発電所が大災害をおこしても、世界的に原発への懐疑的な見方が強まるなかで、いまだに原発への志向は消えない。地球温暖化の原因となる二酸化炭素を大気中に放出する石炭火力発電についても、政府は増設を計画している。19年12月にスペインで開かれた「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)」では、石炭火力発電を進める日本政府の姿勢に対し、小泉進次郎環境相が環境NGOから批判をあびたと伝えられた。世界が太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーへとかじを切っているなかで進めるこのようなエネルギー政策に、違和感をおぼえる国民も少なくないだろう。