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「レジ袋有料化」意味はあるのか――日本での導入がこれだけ遅れた本当の理由

海洋プラスチック 永遠のごみの行方 #1

2020/06/12

世界各国の環境問題への取り組みとは

 環境省の資料によると、フランスでは、使い捨てプラスチック容器の使用を20年から原則として禁止する政令を、すでに16年に公布している。化粧品や洗顔料には微小なプラスチックの粒が含まれていることがあるが、イタリアはこれを含む製品の製造や流通を20年から禁止する計画を18年に決めた。イギリスは、プラスチックのストロー、マドラー、綿棒の販売を禁止すると18年に発表した。米ニューヨーク市では、使い捨ての買い物袋の使用、公園でのペットボトルの販売はすでに禁止されているという。台湾でも、19年から使い捨てプラスチック容器などを段階的に禁止していく。

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 米国は、海洋プラスチック憲章に参加しない連邦政府とは別に、プラスチックごみ問題に積極的に取り組んでいる州や市がある。カリフォルニア州では、14年に使い捨てレジ袋の使用を禁止する法律が米国で初めて成立した。15年、16年と段階的に実施される予定だったが、新法の廃棄をめざす住民投票が16年に行われ、その結果、レジ袋はやはり禁止されることになった。ニューヨーク州もレジ袋の使用禁止を19年に決めた。ハワイ州では20年1月から、レジで渡すビニール袋の使用が禁止された。

民間主導のリサイクル

 民間企業の取り組みも始まっている。

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 コーヒーチェーンのスターバックスは18年、プラスチックストローの使用を、20年末までに世界の全店舗でやめると発表している。スターバックスコーヒージャパンは、20年から紙ストローの提供を始めた。国内で年間2億本のプラスチックストローを削減できるという。コカ・コーラ、マクドナルド、ネスレなども、ペットボトルの原料にリサイクル素材を使ったり、包装や容器をリサイクル可能なものに替えたりしていくことを公表した。

 さきほどの政府の答弁書にも書かれていた主要20か国・地域の首脳会合(G20)が19年6月、大阪で開かれた。その首脳宣言には「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す」と書かれている。もう海に出てしまったプラスチックごみを回収することはできないが、すくなくとも新たなごみの流入は50年までにゼロにしようというわけだ。

 この首脳宣言に対しては、疑義もあいついだ。まず、目標年が「2050年」であること。ちょうど1年まえに合意された海洋プラスチック憲章では2030年を目標にすえていたので、問題の解決を20年も先送りにした感があった。「社会にとってのプラスチックの重要な役割を認識しつつ」「革新的な解決策」といった現状肯定的で、まだ見ぬ技術に期待するかのような文言も並んでいた。

 この首脳宣言に、環境保護団体はすぐさま反応した。たとえばWWFジャパンなどは、「2050年」では遅すぎると批判した。海洋プラスチック憲章と同様に、「2030年」までの削減目標を日本政府が率先して示すべきだと訴えた。

 朝日新聞の19年7月4日付夕刊によると、交渉の過程ではヨーロッパなどから「2030年」を求める意見が出ていたという。50年では遅すぎるというのだ。それに対し、途上国などから今後10年では回収やごみ管理の体制を整えきれないとの意見が出され、結局は「2050年」になった。