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「赤い女」は大笑いしながら、異様な早さで近づいてきた

 赤い女の目撃譚が、いつ頃から大阪で語られていたかは不明だ。ともかくインターネット上でよく参照されるのは、2002年6月21日、2ちゃんねるオカルト板『不可解な体験、謎な話~enigma~ Part4』スレッドに投稿された書き込みとなる。投稿者(おそらく女性)の体験自体は1999年頃となるようだ。

 通勤のために泉の広場を通っていた投稿者は、しばしば「ヘンな女がうろついていた」のを目撃していた。30歳前後、髪が長く小柄で、いつも赤色の古めかしいドレスのような服を着ている。

 ある日の仕事帰り、投稿者は、赤い女が噴水ごしにこちらを睨んでいることに気づく。次の瞬間、体が金縛りにかかったように硬直。さらに、いつもふらふらしている女が異様な素早さで近づいてきた。長い髪とドレスの裾を振り乱し、もの凄い顔で大笑いしているが、周囲の誰もがそれを気にせず通り過ぎていく。女は、自分のすぐそばで顔を覗きこむ。

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撤去前の「泉の広場」の噴水の様子 ©吉田悠軌

 すると、その眼球はすべて、黒目に変わっていた。

「もうあかんって思ったときに、いきなり誰かがぎゅっと腕を掴んできた」

 それは見知らぬ男だった。「静かにして」と彼女に囁き、赤い女を睨みつける。すると女は手出しができなくなったようで「……殺す…」と呟き、その場を立ち去った。その後、「とり殺されたくなかったら、もう通らんとき」と男に言われ、泉の広場に近寄らないことを約束させられたという。

 この体験談が大きな反響を呼び「自分も似たような女を知っている」「女にまつわる奇妙な体験をした」などの報告が続出。『大阪泉の広場に出る赤い女』なる専用スレッドまでたてられた。

「赤い女」像が語られ、姿を消すまで

 しかし私個人としては、「赤い女」とは幽霊ではなく、実在の人物である可能性が高いと考えている。多くの目撃談がネットに書き込まれたのは2002~05年にかけて。そのほとんどは数年前の記憶として語られているので、「赤い女」がよく目撃されたのは1990年代後半から2000年代初頭となる。

 証言を総合すると以下の通り。やけに長い髪、小柄で痩せた体、服装は赤いワンピースが多いがその他の場合もある。そしてなにより、真っ黒にすら見える大きな「黒目」が特徴だ。精神が不安定のようで、よくぶつぶつ独り言を呟いている。彼女の正体は「アキちゃん」という街娼で、男に騙されたせいで奇行が目立つようになったのだ……という、かなり具体的な情報もあった。