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生活や安全に直結する候補者をきちんと育ててこなかった

 それもこれも、自民党都連じゃありませんが私たち有権者が政治不信や無関心を理由に、自分たちの生活や安全に直結する候補者をきちんと育ててこなかったことが、本当に駄目な政治家を降ろそうにも降ろせない原因なのでしょう。安倍晋三さんが必ずしも良い総理だとは思わないし、お友達内閣や面白ガースー官邸が専横の果てに愚策を連発してグダグダになり、問題を起こすたびに官僚や電通に詰め腹を切らせてもなお「頑張れ安倍ちゃん、自民党総裁4選だ」とやるのは、ひとえに有力でみんながこの人ならと思える後継者をついぞ輩出できないからです。

 同じように、安倍政権よりも能力に疑問符がつく小池百合子さんについても、彼女が駄目だと無責任に論評できても次がいないのでは、石原慎太郎閣下から猪瀬直樹、舛添要一とコロコロ都知事を替えても一向に都政は良くならず、都民は満員電車に乗り、待機児童は順番を待ち、貧困に喘ぐシングルマザーはさらに苦しい状況に陥り、豊かな中央港千代田3区や湾岸地域の発展に比して三多摩の過疎具合は進んで貧富の格差は東京の中で広がっています。

2016年に当選。「7つのゼロ」を公約に掲げたものの…… ©文藝春秋

 歌舞伎町ではスカウト狩りが広がって治安は悪くなり、介護施設ではおひとり様高齢者が詰め込まれ、首都高その他インフラの改築・更新はなかなか進まず、東京都が抱える山積した問題に直面して対処をしているのは、言うまでもなく東京都庁職員や特別区・自治体の皆さんですよ。

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日本人に希望を与えられない象徴が東京都政に

 そして閉塞した地方社会に見切りをつけ、日本全国から都会に憧れて東京へ次々とやって来る若い独身者男女が後を絶たないのもあり、ついに東京都民は1,400万人を超えてしまいました。東京だけが悪いわけではないけれども、結婚しない若い人たちは子どもを産まないので出生率は全国最低をキープし、ただでさえ減っていく日本人に希望を与えられない象徴が東京都政になっているのです。

 ふたを開ければ、前回の都知事選で勝利を収めた小池百合子さんが掲げた公約であった7つのゼロ、概ね合格点がつけられるのは「ペット殺処分ゼロ」ぐらいであって、「待機児童ゼロ」は達成度半分、「介護離職ゼロ」は問題外、「残業ゼロ」は寝言に近く、「電柱ゼロ」はようやく条例ができたレベル、「多摩格差ゼロ」はもう都庁を多摩移転しろよぐらいの勢いであって、批判したいというより「ま、小池さんならそうですよね……」という話なんですよね。

満員電車はコロナの影響で一時解消したが…… ©iStock.com

 それでも、「満員電車ゼロ」が一時的に達成できたのはコロナウイルス流行による緊急事態宣言のお陰であって、小池百合子さんの直近の知事支持率が上向いたのもコロナウイルス対策で小池さんが目立ったからです。コロナ特需の最大の受益者が小池百合子さんだとするならば、コロナの最大の被害者は東京都民なんじゃないかと思うんですけどね。残念ながら。

 結局は、今回の都知事選挙も「まともな政治家が選ばれる希望ゼロ」であります。

「本当に申し訳ございませんでした」と、子どもたちに謝らなければならないのかもしれません。

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