アイドルの熱狂的ファンというと、崇高なイメージは浮かびにくいかもしれない。しかしながら、今アメリカで、K-POPアイドルファンたちが「正義の政治軍団」と尊敬を集める事態が起こっている。 

BTS(防弾少年団)©getty

K-POPファンたちによる正義の“乗っ取り行為”

 はじまりは、警察の人種差別問題を訴えるブラック・ライブズ・マター運動(以下、BLM表記)。5月末、デモ参加者と警官の衝突が広がるなか、テキサス州ダラス警察が自前アプリ「iWatch Dallas」への「デモにおける違法行為」報告をつのるツイートを行い、BLM支持派から大きな反発に遭った。 

 そんな中、行動に出たのが、BLMを支持するK-POPファンたちだった。ダラス警察の「iWatch Dallas」やツイートに対して好きなメンバーの動画を送りつづける乗っ取り行為に出た結果、アプリ自体をサーバーダウンさせたのである。

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 同時に、TwitterやInstagramにて、白人至上主義と批判を受ける「ホワイト・ライブズ・マター」や警察官を筆頭とした法執行官を支援する「ブルー・ライブズ・マター」運動のハッシュタグにまで大量のアイドル動画・画像を投稿していき、反BLM的とされる勢力の情報交換を妨害していった。

 これらは、団結するファンの数が多いからこそ威力を発揮した、オンライン版の人海戦術に近い。グローバルなK-POPファンダムのインターネット勢力は巨大で、2019年Twitterにて発信された関連投稿は全体の3%に届く61億相当とされる。 

インスタグラム上の「#whitelivesmatter」の検索結果

「反政府デモを扇動した勢力」としてチリ内務省が名指し

 K-POPファンダムの政治性やアクティビズムは、今に始まったことではない。たとえば2019年には「SNSで反政府デモを扇動した外部勢力」としてK-POPファンをあげるチリ内務省の報告書が話題を呼んでいた(信頼性は謎だが……)。

 寄付活動も活発で、今回も、人気グループBTSのファンによるチャリティ団体「One in an ARMY」がBTSメンバーたちがBLM関連団体に寄付した金額と同額の100万ドル(約1億800万円)を企画発足から24時間ほどで集め、寄付している。