直近では、開発支援メディアの記事をツイートし、タイトルに含まれる「月経がある人々 (“People who menstruate”)」表記に対して「なぜ女性と書かないのか」といった旨の懐疑を表明(*)。これに続く「性別(“sex”)は現実」という主張もあったため、「トランス排除」的だとして大きな反発を呼んだ。
*……「月経がある人々」表記はトランスジェンダーやノンバイナリーの人々への配慮表現とされる向きがある。また、シスジェンダー女性にも無月経状態の人はいると指摘されている。
‘People who menstruate.’ I’m sure there used to be a word for those people. Someone help me out. Wumben? Wimpund? Woomud?
— J.K. Rowling (@jk_rowling) June 6, 2020
Opinion: Creating a more equal post-COVID-19 world for people who menstruate https://t.co/cVpZxG7gaA
ローリングは改めて自身の見解を述べる長文を発表したが、それにしても批判派から様々な問題を指摘されており、物議はおさまっていない。
結果的に、リベラルなフェミニストとして知られていたローリングの言葉は『ハリー・ポッター』ファンダムをカオスに巻き込んでしまった。「トランスジェンダー差別」と批判する人が目立つ一方、ローリングへの支持を表明し結束を強める層も出てきている。
BTSファンダムのBLM寄付活動に見られるように、「ファン・アクティビズム」の特徴は、愛好対象のコンテンツや表現者に共鳴した活動が多いことだろう。だからこその葛藤や問題を引き起こす側面を示したのが、同時期に巻き起こったJ・K・ローリング論争と言える。
ダニエル・ラドクリフが示した、コンテンツとの向き合い方
政治・社会的な議論が活発化するなか、コンテンツとの向き合い方について一つの提示をした表現者が、映画版ハリー・ポッターを演じた俳優ダニエル・ラドクリフである。
彼は、ローリングとの仲違いではないとしながら、トランスジェンダーの人々に関する考えを示すステートメントを公開した。『ハリー・ポッター』との思い出が損なわれてしまったと感じる人々に思いやりを示す文章のなかでは、パーソナルな読書体験は作者からも独立したものだとつづられている。
「もしあなたが、人生のうちに物語と共鳴して、助けられたことがあったのなら──それはあなたと本のあいだにある、神聖なものです。個人的な意見として、その経験に介入する権利は誰にも無い。
あなたが感じた価値はあなたのものです。今回のコメント群によって、それが蝕まれないことを願います」