「地元の岐阜で塾講師をしていたときに、モチベーションを上げたくて番組を見ていたんです。見ているうちに、だんだん俺もこのままでいいのか、という気持ちになって。やっぱりフロアの観客であるより、ステージに立つ男でありたい。だから、34歳で漫画家になるために上京したのも、『情熱大陸』が一因でした」

 宮川サトシさんが、TBS系人間密着ドキュメンタリー番組「情熱大陸」に対する自身の偏愛ぶりを描いた『情熱大陸への執拗な情熱』。ウェブの連載が人気になり、先日コミック版が出版された。ジョギングをしたり、立ち喰いソバを食べたり、同番組に出演(作中「上陸」と呼ぶ)した暁に出すためのエピソードづくりの努力や、不意に幼馴染が先んじて上陸したことへの強烈な嫉妬がコミカルに描かれる。

「出たいと思い続ける人が出られるんだと思うんですよ。でも、自分を見て欲しい、すごいねと言われたいという欲求は、SNSの世界に溢れていますよね。正直、自分もちょっとそんな自分の承認欲求に疲れてきちゃっていて。いまはひっくり返って自分を満足させるすごい作品を描きたいという気持ちになっています。だから、いまが本当は上陸するのにちょうどいいタイミングなんですけどねえ(笑)」

情熱大陸への執拗な情熱

宮川 サトシ(著)

幻冬舎
2017年6月22日 発売

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