東京都八王子市の15歳の少年が短い人生を自ら絶つのに使ったのは拳銃だった。米国などと違い、一般人が生涯を通して触れずに終わるような危険物をどのようにして未成年が手に入れたのか。さまざまなルートが浮かんでは消えている。
1発で命を断った「銃の扱い」
6月8日朝、乾いた突発音を聞きつけて東京都八王子市の民家の2階に息子の様子を見に行ったのは母親だった。目の前にはおびただしい血痕とともに、息子が横たわっていた。何が起きたのか、息子である高校1年の少年(15)の頭部は左側から右側にかけて貫通していた。拳銃で頭を撃ち抜かれていたのだ。
傍らに落ちていた銃はスミス&ウェッソン社製の回転式拳銃。自宅からは実弾70発近くや他の拳銃の弾倉、拳銃ホルダーも3個見つかっていた。自殺に使うだけであれば当然ながら拳銃も銃弾も1つずつあれば済むはずで、なんらかの拳銃マニアだった可能性が高い。
拳銃に詳しいと目されるのは、その「品揃え」からだけではない。拳銃の扱いというのは素人にはかなり難しく、自殺や他殺は失敗しやすいのにもかかわらず、1発で命を断ったからだ。国内でいえば、陸軍出身として銃の扱いを十二分に心得ていたはずの東條英機元首相が戦後間もなく、拳銃自殺を図って失敗し、戦犯裁判にかけられてもいる。
どうやって入手したのかが問題
だが、いかにマニアといえども国内に現物を持ち込むのは至難の業だ。
銃器が厳重に管理されている国内で、拳銃による自殺は極めて珍しい。まして今回は少年だ。厳重管理のなかで銃器に触れる機会があるのは警察官や自衛官を除けば暴力団組員ぐらいしかいない。発生当初は、捜査関係者の間でも少年の親族などに暴力団関係者がいて、そこから拳銃が流れた可能性も検討された。
それでも、暴力団の影は一切みえてこない。そもそも、暴力団関係者だったとすれば、全国の津々浦々に張り巡らされた暴力団のネットワークで情報が出回るのが常だが、今回は全くの沈黙だった。
暴力団の影が見えないことは、警察当局を困惑させた。なぜなら、日本は世界一、拳銃が手に入りにくい国だからだ。