挺対協(現・「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」)の不実について告発した元慰安婦李容洙(イ・ヨンス)氏の記者会見によって韓国社会は大揺れに揺れている。

 はたして挺対協とはいかなる組織なのか。彼女らの実態をよく知る日本人がいる。

 その女性の名前は臼杵敬子氏という。ライターとして女性問題に関心を深く持っていた臼杵氏は、半生を韓国太平洋戦争犠牲者遺族会を支援するための活動に費やした。90年代から議論が始まった日韓歴史問題を、最も間近で見つめてきた日本人の一人であるともいえよう。

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 本連載では臼杵氏から見た、なぜ慰安婦問題が歪んでしまったのか、その真実について回想してもらう。そして挺対協とはどのような組織だったのかを、当事者として批評してもらおうと考えている。(連載回6目/#1から続む/前回から読む)

慰安婦問題のデモ ©勝山泰佑

挺対協による「アジア女性基金潰し」

1997年、アジア女性基金は金田きみ子さんを含む7人の元慰安婦に償い金を渡しました。最初に受け取った7人を挺対協は「日本の汚い金を受け取った」と苛め抜きました。 

 アジア女性基金からは「償い金」として200万円、そして国費から「医療・福祉支援事業」として300万円、計500万円が元慰安婦に支給されました。 

「医療・福祉支援事業」としての300万円は事実上、日本政府が責任を認めたお金だったと言っても良いでしょう。しかし、挺対協は国民募金から払われた「償い金」の200万円だけを俎上に上げ、「アジア女性基金は、日本政府の責任を曖昧にし、責任を国民に押し付けるという誤魔化しだ」と糾弾を続けた。都合の悪い事実は無視し、平気でウソをつくというのが彼女らのやり方なのです。 

 韓国政府は挺対協の意向を受ける形で、元慰安婦に対して3600万ウォンの支給を決めます。アジア女性基金潰しのためです。 

 アジア女性基金の原文兵衛理事長は「韓日で払う形になっても構わない」という決断をし、基金からも「(日韓)両方もらう形になっても構わない」というメッセージを出しました。 

原文兵衛・アジア女性基金理事長 ©︎時事通信社

 98年冬にはTBSソウル支局を元慰安婦たちが訪れて「基金を受け取りたい」と表明しました。その後も、「韓国従軍慰安婦被害者・遺族会」代表の権台任氏が、読売新聞の取材を受け同会所属の元慰安婦10人の基金の受け取りを表明。日本大使館に問い合わせをする人や、アジア女性基金に電話をしてくる人などが急増しました。

 多くの元慰安婦が「韓国からも支給を受けたが、基金のお金も受け取りたい」と問い合わせをしてきたのです。