基金サイドはどこに元慰安婦がいるのかも知りません。そこで新聞広告等を出して、手探りで募集等を行いました。償い金の支払い申請対象は、「慰安婦認定書」を持っている方としました。
韓国政府の「慰安婦認定」についての疑問は前回の連載でも指摘した通りです。
「償い金」を受け取った女性たちに脅迫電話
私の経験も明かしたいと思います。
アジア女性基金は97年1月に7人の元慰安婦に対して「償い金」と「首相のお詫びの手紙」を渡しました。この7名の元慰安婦に対しては、韓国内で激しいバッシングが起きました。「汚い女だ」、「殺してやる」との脅迫電話が2か月あまりも続くような状況になってしまったのです。
韓国政府担当官も、彼女らをこう脅したそうです。
「(基金を受け取ったハルモニには)毎月政府が支給している50万ウォンを打ち切る。また、今住んでいるアパート(貧困者用の公団)も出て行ってもらう」
彼女たちは孤立し苦しい立場に追い込まれてしまいました。前にも述べたように、韓国名を非公表にしていた金田きみ子さんの本名を、挺対協や韓国政府はマスコミに公表しバッシングを続けました。7人の元慰安婦は人権侵害行為にも近い迫害を受けたのです。
「漠然としすぎている……」慰安婦慰労旅行での出来事
私たちは7人を慰労しようと考えて日本の温泉に招待しました。伊豆、箱根を巡る1週間の旅行です。せっかくだから、実態調査も行おうということになりました。
私はある慰安婦とタクシーに乗り、雑談がてら「どこの戦地に行かれたんですか?」と聞きました。
彼女はニターと笑い、手帳を見せてきました。
〈昭和18年南洋群島〉
手帳には日本語のメモ書きが書かれてました。彼女ではない誰かが書いたことは明らかな字でした。
南洋群島というのは漠然とし過ぎています。その土地の慰安所で生活をしている訳ですから、地名や島名を知らないのは不自然です。
例えば姜順愛さんは、7人の後に償い金を受け取ることになりましたが、南洋群島のパラオと地名を正確に答えています。