5月25日にミネアポリスで警官の過剰な拘束により黒人男性が死亡して以来、アメリカでは抗議活動や暴動といった混乱に見舞われている。この混乱の中、様々な勢力がアメリカ国内でひしめき合っているが、最近になってブーガルー(Boogaloo)についての報道が国内でも相次いでいる。時事通信(2020年6月22日)は次のように伝えている。

〈米国で、黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を圧迫されて死亡した事件に対する抗議デモに便乗して、騒乱や内戦を画策する過激主義運動「ブーガルー」の台頭が指摘されている。新型コロナウイルス対策で外出規制を発動した公権力への不満を背景に、オンラインで勢力を拡大。賛同者が殺傷事件も起こしており、治安当局は警戒を強めている〉

ハワイアンシャツに身を包んで武装したブーガルーのメンバーたち ©AFLO

 銃で武装し、ハワイアンシャツの上にタクティカルベストを装着した奇妙な集団は、今年になって反銃規制集会、反ロックダウン集会等で目撃されるようになり、ブーガルーボーイズと呼ばれている。

警官殺害や爆破テロ計画も

 ブーガルーの語源は、1984年に公開された映画「Breakin' 2: Electric Boogaloo」からきている。出来の悪い続編を意味するネットスラングだったが、運動では第二次南北戦争(内戦)の意味で使われている。緩い繋がりを持つ運動で中心的なリーダーは存在しないが、その目的は前述の記事中にもあるようにアメリカ国内での騒乱、内戦の招来にある。その思想的背景として、資本主義のプロセスを進めることで国家秩序の徹底的な解体を目指す加速主義との関連が指摘されている。

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 すでにブーガルー信奉者による死者も出ている。5月29日にカリフォルニア州オークランドで行われていたBlack Lives Matter(黒人の命は大切だ)のデモの最中に車から警官を銃撃して殺害し、さらに自宅に来た警官を待ち伏せして射殺した容疑で現役の空軍軍曹が逮捕されたが、その自宅からはボンネットに自身の血でブーガルーの隠語である「boog」と書かれた車が見つかっている。

ロックダウンへの抗議活動にも参加している ©AFLO

 また、5月30日には、ネバダ州ラスベガスにおいて、デモに紛れ込み暴動を扇動するために火炎瓶を所持していた退役軍人3人がFBIに逮捕された。3人はFacebookのブーガルー関係のグループで知り合い、うち1人はグループの主宰者でもあった。暴動の扇動の他、2人は政府施設の爆破を先月から計画しており、情報を掴んだFBIにマークされていた。

 このように現在問題になっているブーガルーもそうだが、現在のアメリカの極右思想には、ゼロ年代以降の日本のネット文化が影響を及ぼしている。本稿では現象としてのブーガルー等のアメリカの極右運動に、日本のネット文化が及ぼした影響について、「ミーム」を軸として考えてみたい。