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「ISISクソコラグランプリ」が研究対象に

 活動の場をFacebookに移してからも、4chanの気風は抜けていない。ハワイアンシャツに武装というフザけた格好はまさにそうだろうし、Facebookのグループでもアニメや雑なコラージュといったミームが多用されている。ミームの多用は4chanやオルタナ右翼の特徴でもあるが、Facebookでもそれが受け継がれている。

 彼らの言動をふざけているように思われるかもしれないが(実際にそうなのだが)、ミームの影響力は無視できない。実際、アニメ絵のコラージュといったミームの影響力の軍事・外交的な価値が海外では真剣に研究されている。アメリカ政府が出資する海軍分析センターが2018年に発表した報告書「アメリカ政府の影響力キャンペーンにおけるミームの実用性を探る」では、2015年に発生したイスラーム国による日本人拘束事件の際に日本のTwitter上で発生した「ISISクソコラグランプリ」が「ISISの脅迫に対する日本人の抵抗」としてミームの分析対象となっている。

研究対象となった「ISISクソコラグランプリ」(海軍分析センター報告書より)

 実際にロシア政府関連のSNSアカウントが、ミームを使った挑発を行うこともあり、ミームは平時の兵器の様相を呈している。トランプ大統領のTwitterアカウントが、クソコラをRTしたりツイートするのも支持者への宣伝であったり、政敵への攻撃であったりするのだ。

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 ここまで極右を中心に4chanの影響を書いたが、4chanが生み出したのは極右だけではない。権威主義国家やテロ組織、人種差別組織に対するサイバー攻撃を行ってきたハッカー集団アノニマスも4chanに出自を持っており、幅広い思想・運動に4chanが影響を及ぼしていると言えるだろう。

短時間で人間の心を動かす画像掲示板

 日本でネット掲示板と言ったら、2ちゃんねるの知名度が圧倒的で、ヘヴィーなネットユーザー以外では、ふたば☆ちゃんねるの知名度はそれほど高いものではないだろう。しかし、海外に目を転じれば、その影響は2ちゃんねるとは比較にならないほど大きいと言えるだろう。

 そして、そこまで大きな影響力を発揮したのは、やはり画像掲示板という特性が大きいと考えられる。インパクトのある画像とわずかに添えられた文字という形式は、短時間で人間の心を動かす。そういう意味で、Twitterも似た傾向を持つだろう。

 だがここで疑問が生じる。なんで4chanはここまで現実に影響力を持ったのに、本家たるふたばは、ネット文化に影響を及ぼしてもリアルでは知名度微妙で、ある意味平和なのだろうか? そして、これから変わってしまう可能性はあるのだろうか?

……銃を持って街に繰り出すより、としあき(ふたばのデフォルトネーム)と特殊性癖語ったり、タキシード仮面の怪文書を笑って読める世界が続くといいなあ。