憤りが顔に出てしまったことも
それからはクラスター、オーバーシュート、ロックダウンと、今まで使ったことのない言葉が飛び交い、人が毎日亡くなり、緊急事態宣言が出される。日々刻々と変わる厳しい現実は正確にお伝えしなければならないが、感染の不安によるパニックを生むようなことがあってはいけない。
遠隔出演ではあってもいつものメンバーが顔を揃え、いつもと同じようにお伝えする、せめて最後は笑顔で「それではまた明日、お目にかかります」と締め括ることで少しでも落ち着いていただけるような作用を同時に提供できたらと思いました。
ですから、何より私が冷静でなければならないわけですが、VTRの後にコメントする際に憤りが思い切り顔に出てしまったこともあります。『週刊文春WOMAN』でキャスターの大先輩である国谷裕子さんと対談させていただいた際に(2019夏号)、「キャスターが感情を露わにすること」については慎重であることが大切とアドバイスを頂き、その通りだと思っていたのに、つい感情が顔に表れたり、それを言葉に載せてしまったりする。そんな自分の未熟さは情けない限りです。
ショックだったのは、一昨年まで毎日仕事を共にしていた『報道ステーション』(テレビ朝日)の富川キャスターやスタッフの方たち、そのご家族の感染です。一時重症化したディレクターは大変お世話になった方ですし、赤江珠緒さんは私が初めて担当した番組『サンデープロジェクト』の前任者で、番組の引き継ぎをしたときからご縁が始まっています。身近な方々の感染は心配でしたし、一市民としても伝え手としても、より引き締まるものがありました。
遠隔出演をしながら、伝え手としてどうやって私自身がリアルな“今”を捉えていくか。現場に出向いて取材することができないというもどかしさを覚えつつ、この間、飲食店の方、生活困窮者の支援をしている方、医療の最前線の方など、いろいろな立場の方に電話でじっくりお話を伺うことを日課にしてきました。
現場の生の声を聴いてさまざまな側面からコロナ、そしてウィズ・コロナの問題を捉え、刻々と変わる「現在地」への理解を常にアップデートさせていくために、この電話取材は今後も地道に続けてまいります。