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このまま出演を続けていてよいのかと自問自答しながら

 感染予防を人一倍徹底しながらではありますが、こうした不安定な状況であるからこそ、報道番組のキャスターとしてできる限りお伝えし続けたいと思ってきました。一方で、妊娠中の私が仕事を続けることで、産休を取りづらい雰囲気を作ってしまっているというご批判の声をいただくこともあります。

 早く産休に入るべきなのか、このまま出演を続けていてよいのかと自問自答しながら放送に向き合い、産休についての方針を固めてきました。そうしたなか、視聴者の方々には多くの支えを頂きました。

 感染拡大が深刻だったとき、「毎日お腹の赤ちゃんと二人でお仕事をされて大変ですね。足りないという報道があったから」と、お便りとともに赤ちゃん用のガーゼを送ってくださった方がいました。殺伐とした中にあっても他の誰かを想う、カメラの向こうの温かな心に触れたとき、あらためて精いっぱいニュースを届け続けたいという気持ちを強くしました。

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 辛いこともあります。発熱症状のある妊婦さんがコロナを疑われ、どこにも受け入れられずに流産してしまったというニュースがありました。発熱は流産の兆候を示すものだったのに。同じ妊婦としてあまりに辛く、お伝えするのに相当な覚悟を要しました。

 

 編集部のリクエストにお応えして、遠隔出演の舞台裏を少しご紹介しますと、人と人との接触を避け、最小限の人数で放送に対応するために、私にはスタイリストさんとメイクさんはついていません。顔のメイクは普段から自分で行っていますが、照明が計算し尽くされたスタジオと同じメイクを施してしまうと、強く映え過ぎてしまうのが悩みの種です。

 ヘアについては、私の髪はもともとヘアメイクさん泣かせで、まったくいうことを聞いてくれません。そのため残念なヘアのまま放送が始まってしまうこともあります。

 出産後にコロナを巡る状況がどうなっているのか、先が見えないなかではありますが、まずはこれから産休に入るまで、経済対策の中身はどうなのか、医療体制は整っているか、まだまだ疑問は残っていますし、今はコロナによって水面下に隠れている問題もこれから顕在化してくるでしょう。なるべく広い視野で目配りしつつ、愚直にお伝えしてまいります。

※このインタビューは2020年5月9日に行ったものです。

おがわあやか
1985年東京都生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業後、テレビ朝日入社。2011年から「報道ステーション」のサブキャスターを7年半務める。19年4月にテレビ朝日を退社。同年6月、TBS「NEWS23」メインキャスターに。今夏に出産を控える。

週刊文春WOMAN vol.6 (2020夏号)

 

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