少女たちの願いに社会が追いついていなかっただけ
少女は恋をして結婚したがっている、自由な少年を縛り付ける役目である。『ピーター・パン』を引用するまでもなくそのような思い込みがなぜかまかり通ってきたけれど、『若草物語』を読む限り、少女だって、本当は少年と同じように「ずっと自由でいたい」という願いを抱えていたのだろう。ただ、それを口に出し物語として流通させるには、社会が追いついていなかっただけで。
このような願いが普遍的だからこそ、2020年になってもジョーの叫びは私たちの心を打つし、ある意味でフェミニズム的なメッセージを込めた物語として、監督グレタ・ガーウィグは『若草物語』を映画化したのだろう。なんて新しい物語なんだ、『若草物語』。と、ちょっと今になって感嘆するほかない。
『若草物語』が出版されたのは1868年。『ピーター・パンとウェンディ』が出版される1911年よりずっと前だ。だけどそれ以降、こんなにも少女の叫びを描いた物語はなかった。だから『若草物語』はずっとリメイクされ続ける。そして少女あるいは昔少女だった人々の心を打つ。
大人になんてなりたくない。だけど大人になるしかない。だったら、私たちは自分で楽しく生きる権利を勝ち取るしかない。
1868年、原作『若草物語』に込めた作者オルコットのメッセージは、2020年、『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』という物語になって、少女あるいは昔少女だった人たちに届いている。
INFORMATION
映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公開:全国順次公開中!
https://www.storyofmylife.jp/