1ページ目から読む
2/5ページ目

女性とは一線を引き続けた

 あとあと、加納には女と付き合う、という感覚が欠落していることがわかった。パートナーなど不必要だし、気が向いたときに食事をしたり、映画を見たり、ときにセックスするだけでいいのだ。相手も加納同様、割り切った女ならよかった。だが、たいていの場合は女が一方的に熱を上げ、そうなると、加納は女との一切の連絡を絶ってしまう。高価なプレゼントを持参し、加納の気をひこうとすれば逆効果で、女からの貢ぎ物はすべて舎弟に与えた。最初の頃はめげない女でも、自分が思いを込めて選び、プレゼントしたマフラーやシャツ、コートや帽子を、加納の周りの舎弟が身につけているのを目にすると、さすがに気落ちしたらしい。P子さんは、その当人である。

©iStock.com

 だから加納にとって、売春宿ほど居心地のいい場所はなかった。「自称・加納の女」は新宿の青線のあちこちにいたし、実際、こうした場所で加納と夜をともにした女は数え切れないほどいる。だが、ここでも相手がちょっとでも加納を束縛しようとすると、加納は冷淡なまでに女を突き放した。周囲の人間がいくら可哀相と同情しても、まったく耳を貸さず、そのうち女が諦めて加納のもとを去っていくまで、その冷たい態度は変わらない。

編集部に届くラブレター

 ときには編集部に女性からのラブレターが届けられた。「今日、生き別れて20年近くになる父から電話がありました。仕事もなく、する気もなく、『お金貸してくれ』って、なんだか情けなく悲しくなりました。加納さんがもし私のお父さんだったら、26歳にもなる私にこれからなにをして食べていけとおっしゃって下さいますか? 自分の人生だから自分できめなくてはいけないですよね。父としてアドバイス下さい。

ADVERTISEMENT

 この前、インターネットをみていたら、『12月28日に加納さんとパチンコ屋で会って握手していただいた。凄く幸せだった』という男性がいらっしゃいました。私もパチンコ屋に行けば加納さんに会えるんでしょうか?

 昔、6000円が全財産だったとき、全部負けて泣きながら、もうパチンコはやめようって決めてから本気でやったことはありません。

 加納さんはなにしてる時が一番楽しいですか? 私は柄にもなく、小さいときからやっている日本舞踊を見たりしてる時が楽しいです。いつか発表会のある時は見に来て下さいね。今度、加納さんの人生のうちのほんの10分だけでもいいから会って下さい。私の夢は加納さんにお会いできることです。どんな女性が好きですか? 教えて下さい。加納さんの好きなタイプに近づけるよう努力したいです。もう4月も終わりです。今日も雨でした。

 手紙、きちんと届けばいいんですけど……。幼稚な文面と乱筆お許し下さい。身勝手な手紙を書かせて下さってありがとうございました」(Sさんからの手紙を一部抜粋)