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「そうですか、じゃないですよ」元特捜エースの追及……レクサス暴走は“システム不具合”か“踏み間違い”か

元特捜検察のエースとトヨタの法廷闘争 #4

2020/07/07

 トヨタの最高級車レクサスの暴走による死亡事故で、過失運転致死罪などで起訴された元東京地検特捜部長の石川達紘弁護士(81)に対する第4回公判が6月30日、東京地裁で開かれた。

 国土交通省所管の独立行政法人で自動車事故などの技術的検証を担当した専門家が被告側証人として出廷。ドライブレコーダーなどの詳細なデータ解析をもとに「ブレーキシステムの不具合で車が勝手に発進、暴走した可能性がある」と証言した。「車に不具合はなく石川のアクセル踏み間違いが原因」としてきた検察側の主張が揺らいだ形で、検察側は、専門家による反論の意見書を提出すると表明した。(#1#2#3より続く。敬称略)

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左足がアクセルペダルに届いたかどうか、が最大のポイント

 出川証言は、石川の左足がアクセルペダルを踏み込んでいないのに、事故車がブレーキシステムの不具合で勝手に暴走した可能性を示した。ただ、一定の説得力はあっても、あくまで“可能性”である。それを事実として科学的に立証するのは極めて難しいと思われる。結局、裁判は、石川が左足でアクセルペダルを踏み込めたのかどうか、が最大のポイントになる。

 事故後、「アクセルペダルを踏んだ記憶がない」と鬱々とした日々を送っていた石川が「踏んでいない」と確信したのは、19年1月24日、東京都交通局都営バス品川自動車営業所港南支所で行われた検察、警察による実況見分だ。捜査側は、ドライブレコーダーやEDRの解析で石川の踏み間違い事故と確信しており、石川の要求になかなか応じなかったが、検察上層部の一声で実現した。

 事故車と同型のレクサスLS500hの運転席の座席の位置を、警察で保管している事故車両と同じ位置に調整。石川を座らせていろんな角度から写真撮影した。

©iStock.com

 石川によると、右足をドアに挟んだ状態で、両手でハンドルを握ることは可能だったが、左足はどうやってもアクセルペダルにもブレーキペダルにも届かなかった。事故前にシートを後方にずらして休憩していたのを思い出した石川は、得心がいった。

 警視庁側は、この事態を予期しておらず、石川の右足をドアにはさみ、前のめりになった姿勢にしたり、事故時に履いていた靴を改めて装着させたりしたが、それでも届かなかった、という。 

 警視庁はその後の19年2月8日、事故現場で事故車と同型の車を用意。防犯カメラなどの映像をもとにシート位置を事故時と同様にセット。石川と身長、体重が同じ警官を、右足をドア枠に置いた状態で運転席に座らせたところ、左足でアクセルペダルを踏むことができた、とする見分結果をまとめた。検察はこの見分資料を石川に示し石川を起訴した。

 石川側は1月24日の実況見分で撮影した写真を判断資料にするよう検察に求めたが、警視庁は提出に応じなかったという。そのため、石川側は、改めて1月24日の見分と同様の再現見分を行い、その写真とビデオを裁判所に提出した。

「なぜ、完全に踏み込んだ写真を撮らなかったのか」

「鑑定書」を作成した警視庁交通捜査課の寛は、1月24日と2月8日の両方の見分に立ち会っていた。第2回公判(2月18日)で、検察側証人の寛を石川側は攻め立てた。

 石川の弁護人の松井巖は19年2月8日の見分で、石川とは別の仮想運転者(警官)を使った再現見分について質問した。警官は161センチ、61キロの石川と同体格だとされる。

松井「足の長さを計測していませんね」

鑑定書作成警官「はい」

松井「足の長い人、短い人というのは、個性があるんじゃないですか、一般的に」

鑑定書作成警官「一般的に、はい。多少」

松井「左足でアクセルペダルを踏むことができるかどうかというのは、やはり、そこで、本件にとってはとても重要なことなので、測って同じ条件でやるべきだったんじゃないでしょうか」