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元SMAP草彅剛、稲垣吾郎、内田有紀、広末涼子…「アイドルはなぜ“つかこうへい”で演技に目覚めるのか」

劇作家つかこうへい没後10年

2020/07/10

genre : エンタメ, 芸能

 今年1~2月には、今泉と同じく欅坂46から現役メンバーとして菅井友香が『飛龍伝2020』に出演した。菅井が演じたのはこれまで富田靖子に始まり、内田有紀や広末涼子などが演じてきた神林美智子という大学生である。入学当初は地味で目立たなかった美智子だが、全共闘の幹部の男に推されて、全国数十万人の学生運動の闘士たちのリーダーにまつりあげられ、その人生は一変する。やがて彼女はその幹部の男と恋仲になり、敵対する側の機動隊員とのあいだで翻弄されることになる。先述のとおり、これまで多くの若手女優に演じられてきた同役だが、欅坂のキャプテンである現実の菅井とも重なって、そのせつなさの度合いでは歴代でもっともハマっていたように思われた(ちなみに筆者はこれ以前に内田有紀、広末涼子の主演した舞台も観ている)。大勢の男が登場するなか女はただひとりということも多いつか作品と、日頃男性ファンに取り囲まれてスポットを浴びるアイドルは親和性が高いともいえる。

舞台「飛龍伝2020」の公開稽古、左から小柳心、味方良介、欅坂46・菅井友香、石田明、細貝圭、小澤亮太

「アイドルだからさ、どたん場の力ってすごいんだよ」

 じつはつかは生前、《アイドルだからさ、どたん場の力ってすごいんだよ。コンサートで1日3ステージとかやってきてるから。絶えず見られてきたやつのすごさがあるから大丈夫だろう》と語っていたことがある(※12)。これは、内田有紀の初舞台を前に、ほかの70人の出演者は全員男というなかで彼女が先頭に立つことについてアドバイスを求められた際の回答だが、まるで後年、自分の作品にアイドルが続々と出演するのを見越していたかのようでもある。

 生前のつかはまた、劇作家に書けるのは芝居のせいぜい4割で、あとの6割は役者に書かせてもらっていると常々言っていた。それゆえに同じ作品でも演じ手が変わるたびに、物語は大きく改変された。そのスタイルは彼が亡くなったあともしっかりと受け継がれているようだ。だからこそ没後10年経っても、新しい観客を集め続けているのだろう。

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©文藝春秋

※1 長谷川康夫『つかこうへい正伝 1968―1982』(新潮社、2015年)
※2 『FRIDAY』2010年9月3日号
※3 『キネマ旬報』2007年5月上旬号
※4 『週刊現代』2015年10月24日号
※5 『キネマ旬報』2011年1月下旬号
※6 『FRaU』2001年2月13日号
※7 つかこうへい『つかこうへいの新世界』(メディアート出版、2005年)
※8 『週刊朝日』2012年12月7日号
※9 『週刊新潮』2010年7月29日号
※10 『毎日新聞』2012年8月19日付朝刊
※11 「ローチケ演劇宣言!」2019年2月1日配信
※12 『レプリーク』2001年9月号

元SMAP草彅剛、稲垣吾郎、内田有紀、広末涼子…「アイドルはなぜ“つかこうへい”で演技に目覚めるのか」

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