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“グラビア界の黒船”リア・ディゾンの抜擢

 広末涼子は一昨年、ニッポン放送で放送されたつか原作のラジオドラマ『ストリッパー物語』にストリッパー役で出演した。このとき、2003年の「つかこうへいダブルス」と同じく筧利夫と共演、筧演じる男の娘役を広瀬すずが演じている。演出は2003年の『幕末純情伝』も手がけた杉田成道で、脚色をかつてつかに師事した羽原大介が担当した。つかのもとからは俳優だけでなく、現在脚本家として活躍する羽原や長谷川康夫(『蒲田行進曲』のヤスの名は彼に由来するという)、前出の演出家の岡村俊一なども輩出している。

 2010年、病床にあったつかからその夏に予定されていた『広島に原爆を落とす日』の再演を全権委任されたのも岡村だった。このとき岡村は、かつて“グラビア界の黒船”と呼ばれて人気を集めたリア・ディゾンを起用した。岡村によれば、人を殴る演技にしても実際に殴っているように見せるには訓練が必要なのに、リアは最初から“バチンッ!”と音がしそうな演技ができて、共演者の筧利夫をも驚かせたという。リア自身は、《つかさんの舞台はF1みたいって言うけど、まさにその通り。箱から飛び出す感じで常に限界にチャレンジしているのに、その裏に大切な意味が込められているところが凄い》とつか作品について語った(※9)。つかが亡くなったのは奇しくもその稽古初日であった。公演はそのまま追悼公演となる。

©文藝春秋

“歴代で最もハマっていた”欅坂46のキャプテン

 作詞家・プロデューサーの秋元康も、若い頃につかの芝居を熱心に観ていたひとりだ。小さな劇場をつくって、そこで毎日アイドルが公演するというAKB48のコンセプトも、さかのぼれば小劇場でつか作品を観た経験が原点にあるという(※10)。それもあってか、秋元が総合プロデュースを手がけたアイドルグループからは、近年、つか作品に出演するメンバーが目立つ。冒頭にあげた井上小百合も、今回の『銀ちゃんが逝く』が今春乃木坂46を卒業して初めての本格的な仕事となる。本作は当初、本来の形どおり演劇として上演される予定だったが、コロナ禍により全公演が中止となり、その代わりに「朗読という名の演劇」イベントとして開催されることになった。

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 これより前、2016年には前年にSKE48を卒業した松井玲奈が『新・幕末純情伝』で主役の沖田総司に抜擢、続いて2018年の『新・幕末純情伝 FAKE NEWS』には、NGT48を卒業したばかりだった北原里英が同役を務めた。昨年には、前年に欅坂46を卒業した今泉佑唯が、その名も『熱海殺人事件 LAST GENERATION 46』で婦人警官役で出演した。今泉は稽古にのぞむにあたり、《絶対にキツくて大変なことはわかっているんですけど、その過酷さを味わいたい》と意気込みを述べている(※11)。