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「いつも親分の隣に座っている男が刑事?」ヤクザを知り尽くした“伝説のマル暴捜査員”がいた

2020/07/12

genre : ニュース, 社会

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 現役の山口組系幹部が、近年の事務所事情について語る。

「ヤクザの事務所には金庫があって、たんまりとカネが詰まっているといったイメージがあるだろうが、いまは全くそのようなことはない。ましてや拳銃や覚醒剤など入っていない。そんなものがあれば、警察のガサ入れの時にすぐにバレてしまう。

 警察に発見されて困るようなものは別のところにある。事務所はいわば会合の場。警察も何かあるたびにガサ入れに来るが、何もない。そういう意味では、ガサはただのセレモニーに過ぎないのではないか」

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携帯電話の時代に組事務所はいらない?

 別の指定暴力団幹部は事務所機能の変遷について明かす。

「かつて事務所には部屋住みの若い衆がいて、電話番のような仕事が重要だった。例えば、縄張り内の居酒屋やクラブなどで『酔った客が暴れている』『料金が高いと文句を言って騒いでいる客がいる』などの連絡が入れば、駆け付けてトラブルを解決していた。ましてや知らないヤクザが来たとなれば当然動かなくてはいけない。

 しかし、今は携帯電話の時代。事務所に張り付いている必要はない。だから視察の刑事さんは事務所に来ない。付き合いがあっても、用がある際には携帯に連絡してきて、外で会うことにしている」

(写真はイメージ)©iStock.com

 さらに、かつてと様変わりしたエピソードも明かす。

「これまで事務所はシンボル的な存在だったが、近年はシノギ(資金源)が苦しく、事務所を売り払ってしまうこともある。ウチも数年前だが売り払い、かなりなカネが親分の懐に入ったはずだが、あれはどうなったのか。そのまま不問に付されているのだが……」(同前)

 ヤクザと警察をめぐる関係は変化したが、警察としては「情報を取れない」では済まされない。前出のベテラン捜査員が明かす。

「顔つなぎが出来ている幹部クラスと、事務所ではなく外に呼び出して喫茶店などで話を聞くようにしている。いくら携帯電話の時代でも、何かしらの方法で接触しなければ情報は取れない。とにかく内部の情報を提供してくれる協力者の獲得が重要だ」

 時代の変遷を経ても、水面下で警察とヤクザの暗闘は続けられている。(敬称略)

「いつも親分の隣に座っている男が刑事?」ヤクザを知り尽くした“伝説のマル暴捜査員”がいた

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