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2020/07/14

「尖閣諸島」問題が対象になる可能性も

「国家の分裂や国家の統一を損なうことを目的にした行為」が「香港や台湾、ウイグルの独立運動」を主眼としていることは論を俟ちません。我が国の領土である尖閣諸島を自国領土と標榜する中国の立場からは、尖閣諸島問題も含まれそうですが、ここでは主に香港などについて検討してみます。

 日本人の多くは普段「香港や台湾、ウイグルの独立運動」といった政治的運動に参加していません。にもかかわらず、リスクだと言われるのは、条文の茫漠として広汎な規定の仕方にあります。

 本法は「組織し、策略を練り、実施或いは以下の主旨に関与」「扇動、支援、教唆、金銭で他人を支援」したものをすべて処罰するとしています。「扇動する」「支援する」とは何を意味するのでしょうか。

 例えば「香港や台湾、ウイグルの独立」をうたうツイートや記事はインターネットを見ていれば無数に流れてきます。これらをリツイート、好意的に論評する行為が「扇動」「支援」に当たらない、とは誰も定義してくれません。

©getty

「香港や台湾、ウイグルの独立についてリツイート」することで本法を適用されてしまうことは十分に予想できます。

 上記に関連して2年前にNHKで放送された「消えた弁護士たち 中国“法治”社会の現実」(https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20180722)という番組があります。中国で人権を守る活動をしていた数百人の弁護士が行方不明となり、多くは未だに家族も会うことすらできていません。よくNHKがここまで踏み込んで取材できたと思う衝撃の内容です。

 本件については、普段中国に言及しない日本弁護士連合会も「中国の弁護士の一斉連行を憂慮」する声明を出しています(https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2015/150724.html)。この一斉連行が、本土での中華人民共和国国家安全法施行直後に行われた、という点からするなら、番組に出てくるような状況は明日の香港の姿ではないでしょうか。

【2】どこにいる誰が処罰の対象になるのか

 次に、どこの誰が処罰の対象になるのでしょうか。この点については下記の条文が定めています。

 第38条 香港特別行政区に永住権を有しておらず、香港特別行政区外の者が香港特別行政区に対して罪を犯した者も本法律に基づいて処罰される。

 香港特別行政区に永住権を有しておらず=外国人、香港行政区外の者=外国在住者も処罰されるという内容です。

 特にこの点は、インターネット上で「香港の航空会社であるキャセイパシフィック航空に搭乗するだけで捕まってしまうかもしれない」「外国人を処罰する法律を中国が作るなんておかしい」という反発を呼んでいました。