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2020/07/14

 つまり、「台湾や香港の独立についてリツイートしたことがある日本人が、“上海浦東国際空港”や“マカオ国際空港”に上陸するだけで、刑罰を科せられる」ということ自体は、既に2015年から現実のものになっていたわけです。また、上述した「犯罪人引渡し条約」の中国本土との締結国も、香港と違い欧米先進国は少ないものの50か国以上に上ります。

 とすれば、去年までは普通に中国旅行を楽しんでいたのに「今回の法律で怖くて中国本土に行けなくなった」というのは少し論理的でないかもしれません。中国本土はそれ以前から「怖かった」のに、日本人が気付いていなかっただけなのです。

©iStock.com

 かといって2015年以降、「日本人がインターネットの書き込みを理由に中国で逮捕された」というようなニュースは見ません。

「罪に問える」ことと「罪を問う」ことは別なのです。

 ひょっとすると、見せしめのように目をつけられた日本人が逮捕され、非公開の裁判で処罰されることがあるのかもしれません。中国政府がやりたいようにやる、ということです。

「その気になればいつでも罪に問えてしまう」制度

 まとめると、本法律は、中国やマカオは危険だが、香港は安全だ、と考えていた人にとっては大きな出来事であり、本土と同様の法律、あるいはマカオと同様の法律が香港でも成立してしまった、という点がポイントになりそうです。

 現在の本土での運用の状況を見ると、日本人が大量に罪に問われるような状況ではなさそうです。ただ、「その気になればいつでも罪に問えてしまう」ような制度の国を訪問するのが怖いかどうか、という点につきます。

 そして、「その気になればいつでも罪に問われる」国に住んでいる人たちのことにも想像を巡らせるべきでしょう。我が国でどんな政策を(沖縄独立論のようなものも含めて)唱えても、逮捕されることはありません。我が国には言論の自由があり、民主制があり、公開裁判の制度と手続保障があるからです。これがいかに貴重か、きっと香港に住んでいる方は我々より良く知っているでしょう。

 日本は本法に対する対策を講じるべきだ、という声もインターネット上にはありました。

 我が国にとって、民主主義と言論の自由を守り、香港からの脱出を考える人や企業にとって安全で魅力ある国であり続けることが何よりの対策ではないかと私は考えます。

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