断固として誘惑をはねのけた男子学生は数えるほど
この結果に、「若い者はなっとらん」と嘆く向きもあるだろう。それでもわずかな救いは、男子学生の25%(4人に1人)が見知らぬ若い女性からのセックスの誘惑を断っていることだ。
とはいえ、彼らがみな品行方正というわけではない。何人かは「ごめん、結婚してるんだ(結婚してなければ君とセックスしたい)」と残念そうに振る舞い、「今夜はダメだけど明日の夜はどう?」「なんで夜まで待つの? いまからしようよ」と交渉を試みた者もいた。結局、断固として誘惑をはねのけた男子学生は数えるほどしかいなかった。
アメリカの(男の)心理学者たちは当初、この結果を認めることを頑強に拒んだが、奇妙なことに自分たちで再実験して検証しようとはしなかった。その理由は、論文の主張が正しいことを(内心では)知っていたからだろう。自分だって、若い女性とセックスする機会があればよろこんで飛びつくに決まっているのだ。
その後、2000年にベルギー、デンマーク、ドイツで同様の実験が行なわれたが、結果は同じだった。日本の大学でもやってみたら面白いと思うが、おそらく似たようなものだろう。
男と女は「性戦略」が根本的に異なる
もちろん、これにはさまざまな説明が可能だ。
実験が行なわれたのはエイズ禍の前だが、女子学生は性病の危険を知っていたのかもしれない。妊娠を心配することも当然あるだろう。
だがもし見知らぬ男とのセックスを拒む理由が、性病や妊娠に対する危惧だけなら、一部の女性は、避妊を約束させるなどしてセックスの誘いに応じたはずだ。まったく同じ手法でナンパしたにもかかわらず、男と女でここまで極端に反応がちがうことは、子育てや教育、文化の影響だけでは説明できない。
妊娠・出産・子育てを考えれば、女にとってセックスのコストはものすごく高い。だからこそ、ベッドを共にする相手を慎重に品定めしなければならない。
それに対して男は、(子育ての責任を放棄するなら)セックスのコストはほぼゼロだ。だったらデートなどという面倒なことは飛ばして、いきなりセックスした方がコスパがいい。
こうして、男と女は「性戦略」が根本的に異なることが明らかになった。女は「男の劣化したコピー」などではなかったのだ。
(※)Russell. D. Clark and Elaine Hatfield(1989)Gender Differences in Receptivity to Sexual Offers, Journal of Psychology & Human Sexuality