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上野千鶴子「むしろ、不倫しない人はなぜしないのか」への、不倫しない私の答え

私も実父がしばらく不倫をして自宅に帰らなかったことがあります

2020/07/16
note

結婚とは、所詮は人間同士の決め事に過ぎない契約なのだけれど

 逆に言えば、上野千鶴子さんのように、「不倫なんて当たり前。しても構わない」と論じるのは、むしろ優しさじゃないかと思います。結婚したとはいえ、もっと個人の幸せを追求したっていいじゃないか。そういう人がいても、全然不思議ではないし、否定されるべきものでもないと思うんですよね。私は不倫をしませんし、不倫はいかんなと常々感じていますが、それは他人に押し付けるものではなく、誰かをその考えに従わせるべきものでもありません。

 そして、問題は不倫がもたらす夫婦間、子どもへの影響です。やはり、行楽は家族と行きたいし、運動会のような催し物は両親と弁当を食べたい。なぜなら、私が家族と行った行楽が楽しかったし、運動会で母親とだけでごはんを食べたのが寂しかった記憶が鮮明に残っているから。だから、子どもが4人いても、あるいはそれ以上いても、家内と話し合ってなるだけ多くの行事には夫婦で子どもの活動を見たいし、過保護にならない程度に一緒に暮らしていきたい。

©山本一郎

 それは、伴侶であり子どもの側から見た、夫、妻、親の姿です。結婚とは、確かに上野千鶴子さんのいう、所詮は人間同士の決め事に過ぎない契約なのだけれど、やっぱり幸せに暮らしたいのですよ。傷つきたくない。そこに、本人の性的欲求が高ぶったから多目的トイレでセックスしてましたとかいう話が出ると、やっぱり家族は不幸な感情になるし、割り切れない思いを持つだろうし、世間からも「何してんだあいつ」と言われます。

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 個人の自由を尊重するにせよ、そのやり方は独身のときと、結婚してからでは変わらざるを得ないし、それがおかしいと上野千鶴子さんが思っているからこそ、そのようなご主張をされるのでしょう。結婚が良いか悪いかは捉える人によって変わりますが、むしろ、そういう世にある仕組みの是非を一個一個どう考えるかというよりは、自分自身がどう幸せを構築したいのか、未来に向けてどういう行動を取ろうとするのかにすべてがかかっている気がするのです。

 また、先日も朝日新聞の人生相談で上野千鶴子さんがなかなか鋭角な雰囲気の回答をされていましたが、ここまでくるともう「上野千鶴子さんに聞く朝日新聞もアレだが、正面から蹂躙する上野千鶴子さんさんも相当アレ」という作品に仕上がっていて、もう未来も何もなくなっています。そういう意見もまた、アリなのです。

妻が手も握らせてくれない 布団に潜り込むと罵声に暴力:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASN7C621VN6KUCFI006.html

結婚には安寧と希望がある

 独身は自由ですが、結婚は単に不自由なだけではなく、伴侶とともにいることで得られる安寧があり、子どもを育み共に生きるという希望がある。同性カップルだって、歳の差婚だろうが、外国人だろうが、その人が幸せを感じ、神が祝福をしてくださるのであれば、それはその人が決めることです。そういうトレードオフを弁えたうえで、不倫をして「あいつ馬鹿かよ」と罵られたり、家庭を顧みず仕事に励みすぎて妻に捨てられ寂しい資産家になったり、まあいろんな人生があり得ると思います。

 人生は人それぞれなので、その人それぞれの決断や判断は自由に、それに伴う行動に対する評価もまた、自由であることが、一番世の中が良く回る方法なんじゃないですかねえ。

 私は「不倫はいかんな。家族を壊し、愛すべき人を泣かせるから」と言い続けますが。

 奥さん、愛してるよ。

©山本一郎

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上野千鶴子「むしろ、不倫しない人はなぜしないのか」への、不倫しない私の答え

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