両班(ヤンバン)意識とは、いわゆる貴族意識のことです。挺対協には韓国の名門女子大学である梨花女子大卒が多く、みなインテリです。
「私は土方の娘だから慰安婦にされたの。同じ町の両班の娘は慰安婦にされてないじゃないか」
姜順愛氏はよくこう話していました。慰安婦には常奴(サンノム)と呼ばれる下層階級の家庭の娘が差し出されるというケースが多かったといいます。
慶尚南道馬山出身の姜順愛氏の自宅の道を挟んで向かい側には後に挺対協の幹部になった女性が住んでいたそうです。その幹部は両班の娘でした。
同年代の2人の女性の運命はその後、大きく分かれました。
姜順愛氏は「何で私が慰安婦になり、彼女(挺対協幹部)は慰安婦にならずに梨花女子大に進めたのか」とよく嘆いていた。
他の元慰安婦からも「私は両班の娘の身代わりになって慰安婦として差し出された」という証言を聞いたことがあります。みな、階級により慰安婦にされるというその不条理さを死ぬまで訴えていました。
利権作りや日本叩きに奔走する挺対協
今も両班階級にいる挺対協は、自分の利権作りや日本叩きに奔走するばかりで、元慰安婦たちの生活や人生に関心を持とうとはしない。挺対協の権力作りの為に利用されたハルモニたちは、死んでも死にきれない思いでいるはずです。
一方で日本政府側にも問題があったと思います。もっと日本政府は実被害者である元慰安婦たちと直接向き合うべきだったのです。事実確認を怠り、お金だけで問題を解決しようとしたことは誤りだったと思います。
全てのハルモニたちの話を聞き、虚実を含め検証・資料化し、正確に歴史として残しておけば、挺対協が何と言おうと反論できたはずです。日本には歴史の真実を追求して、後世に伝え残す責任があるはずです。
私たちは金田きみ子氏や沈美子氏などの多くの被害当事者の証言から学び、慰安婦問題の本質を知るべきだと思います。
挺対協は世界中に慰安婦問題を喧伝してまわり、ウソを流布し問題を歪め続けました。結果、挺対協は弱者である元慰安婦を利用して金儲けし続けたのです。
尹美香(ユン・ミヒャン)は国会議員にまで上り詰めました。慰安婦問題を政治利用し利権化した、その悪行は償えないほどの大罪です。問題が噴出した挺対協をどう断罪するのかは、韓国社会に突き付けられた大きな課題だと私は思っています。
(了)
(インタビュー・赤石晋一郎)
<引用出典>勝山泰佑「海渡る恨」(韓国・汎友社、1995年)
赤石晋一郎 南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。「フライデー」記者を経て、06年から「週刊文春」記者。政治や事件、日韓関係、人物ルポなどの取材・執筆を行ってきた。19年1月よりジャーナリストとして独立
勝山泰佑(1944~2018)韓国遺族会や元慰安婦の撮影に半生を費やす。記事内の写真の出典は『海渡る恨』(韓国・汎友社)。