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「挺対協の償なえない大罪」 元慰安婦に韓国人より愛された日本人が語る“悲劇の真相”

「挺対協」“嫌韓”を作った組織の30年 #8

2020/07/20
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 キム・ジョンニム氏は何度も沈美子氏のもとを訪問したそうです。沈美子氏は黙々と働くキム・ジョンニム氏を見て思うところがあったようです。キム・ジョンニム氏も戦争で父親を失った同じ「実被害者」だと理解するようになり、心を開いてくれるようになったのです。 

「ジョンニムさんに悪いことをした」 

 彼女はこう謝ったそうです。

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 元慰安婦の多くは孤独な老後を送っている人ばかりでした。食事も一人でしているというハルモニが多かった。フォローアップ事業では、彼女らの自宅を訪ね「お体の具合はどうですか? どこか悪いところありますか」とまず聞きます。日本からは胃腸薬やシップをお土産として持って行くと喜ばれた。特に正露丸が大人気でした。雑談後、食事に連れ出し、少しドライブをするというのが定番でした。 

「臼杵は今度いつくるんだ!」 

 小さな行動でもハルモニたちは凄く喜んでくれ、こう言ってくれました。元慰安婦のお世話をしていた、あるヘルパーさんからはこう聞かされたこともありました。 

「ハルモニはウスキさんが来ることを本当に楽しみにしているのよ。訪問の数日前からソワソワし始めて、髪をセットしたり、綺麗なチマチョゴリを用意して待ってるのよ」

元慰安婦のハルモニ(中央)と臼杵敬子氏(左)、キム・ジョンニム氏(右)(臼杵敬子氏提供)

 元気なハルモニは旅行に連れ出しました。ソウルから2時間ばかりの所に安眠島というリゾート地があります。景色は綺麗だし、温泉もある所です。場所は私が好きな韓流ドラマの舞台になったところで、みんなで行こうと思いつきました。  

 ホテルで元慰安婦たちに温泉に浸かってもらい、フルコースのマッサージを受けてもらいました。 

 ハルモニ達は「こんな幸せはない」といった上気した表情でくつろいでくれた。夜は花札大会でみんなで盛り上がる。戦後、苦労を重ねてきた元慰安婦たちは、みな倹約家です。たまには少し贅沢をしてもらって、生きがいを感じてもらえればと思っていました。 

忘れられない、あるハルモニのこと

 慰安旅行は年に3、4回行いました。ある時、私はホテルの片隅に祭壇を作って、亡くなられた元慰安婦や遺族会関係者の写真を飾りました。みなで追悼をしようと考えたのです。 

 金学順氏、金田きみ子氏、姜順愛氏等、十数人の写真を飾りましたーー。 

 私にとっても思い出深い方ばかりです。 

追悼式の様子(臼杵敬子氏提供)

「ここまでしてくれるのか」 

 元慰安婦たちはみな大いに喜んでくれました。キリスト教、仏教などみな宗派は様々でしたが写真を拝み、持ち寄った料理を食べ、お菓子をつまみながらみなで語り合いました。この追悼式は毎回恒例の行事となりました。 

 フォローアップ事業は2015年の日韓合意により廃止が決まり、2017年度をもって終了しました。せめて元慰安婦が生存している間だけでも続けたいと思っていたので、事業の終了は残念でなりません。 

 元慰安婦のハルモニたちとは様々な思い出があります。 

 その中でも金田きみ子氏は、私にとっては忘れえぬハルモニの一人です。