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令和の覇権をかけた永瀬と豊島の頂上決戦 そこには藤井聡太も参戦してくる

令和の覇権をかけた永瀬と豊島の頂上決戦 そこには藤井聡太も参戦してくる

第5期叡王戦七番勝負第2局・観戦レポート #2

2020/07/18
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「本当にすごい棋士ですから、戦ってみたい」

「素晴らしい才能の持ち主で、まだ10代です。トップレベルの実力がありますし、伸びしろがあってさらに強くなっていくと思います。自分とは一回り違うので、彼が25歳の時に自分が37歳。そう考えると、自分が年齢的なものを乗り越えて、相当うまくこれからの時間を過ごしていかないと、なかなか彼が全盛期といわれる時に戦うのは難しいかなと思っていて、それでも本当にすごい棋士ですから、戦ってみたいですし、それを長期的な目標としてやっていきたいと思っています。

(『タイトル戦で相まみえるイメージもあるか』の問いに)そうですね。すぐに挑戦してきてもおかしくないですし、ほかに強い方もたくさんいるからどうなるかわかりませんけど」

 その予感は当たっていた。藤井聡太はヒューリック杯棋聖戦で史上最年少タイトルホルダーの記録を樹立し、王位戦も2連勝スタートと二冠獲得が視野に入る。

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史上初めて17歳でタイトルホルダーとなった藤井聡太棋聖(提供:代表撮影)

 本局を総括すれば、永瀬を相手に劣勢から持将棋に持ち込んだ豊島の勝負強さが光った一局といえるだろう。だが、それを堂々と受け入れた永瀬にも凄みがある。勝利への渇望は「早く勝ちたい」の焦りにつながり、逆転を引き起こしやすい。永瀬はその誘惑に負けなかった。いや、そもそも浮かばなかったのかもしれない。感想戦後のインタビューでは次のように語っている。

「持将棋、千日手は割と持ち味だと思うので、その点は楽しんでいただけたらいいなと思います。もし局面がよかったのであれば持将棋にしてはいけなかったので、その点を精査して、皆様にいい将棋をお見せできるように頑張りたいと思います」

 

両者の力が拮抗していなければ生じない

「持将棋、千日手が持ち味」は恐ろしい。最強の挑戦者を何番でも受けて立つ姿勢、そしてそれを支える体力と根気がなければ口にできない言葉だ。

 引き分けは両者の力が拮抗していなければ生じない。二冠同士の持将棋には、これからもしのぎを削っていくのを予感させるような価値がある。

 城崎温泉の守護寺・温泉寺がある大師山。ロープウェイで上ることができ、山頂からは城崎温泉街や丹後半島、日本海にそそぐ円山川を一望できる。山頂にあった兼好法師の歌碑には、次のように記されていた。

〈「花のさかり 但馬の湯より
 帰る道にて 雨にあいて」
 しほらしよ 山わけ衣 春雨に
 雫くも花も 匂ふたもとは〉

 
山頂にあった兼好法師の歌碑

 叡王戦七番勝負が終われば秋になり、永瀬は王座戦、豊島は竜王戦の防衛戦が始まる。城崎は名物のカニが次々に解禁されるころだ。厳しい山陰の冬を越せば、春がやってくる。温泉街を流れる大谿川では、桜吹雪と揺れる柳がさぞかし美しいことだろう。湯につかった兼好法師は帰る道すがら雨にあい、「袂を絞ることはすまい。落花をあびて山を分けてきたわたしの衣は、春雨に濡れて、袖のしずくも衣についた花も匂っているので」と詠んだ(『中世和歌集室町篇(新 日本古典文学大系 47)』(岩波書店)より)。

 戦いの最中、ごちそうと温泉は疲れを癒してくれる。だが、頭の中が空っぽでなければ、心の底から味わえない。永瀬と豊島はほとんど西村屋から外に出られなかった。城崎の地は永瀬と豊島が対局以外で訪れることを待っている。ただ、その日はまだまだ先になるだろう。盤に向かわなければ、取り残されてしまうのだから。

城崎温泉といえば、多くの文豪が愛した「文学のまち」でもある。「本と温泉」は2013年の志賀直哉来湯100年を機に立ち上げられた出版レーベルで、写真の本は地域限定で発売されている。いずれもネットでは販売されていない。蟹の殻のような装丁の湊かなえ『城崎へかえる』は、ある重要なシーンで将棋が出てくる ©文藝春秋

写真=小島渉

INFORMATION

第5期叡王戦七番勝負第2局 棋譜
http://www.eiou.jp/kifu_player/20200705-1.html

第5期叡王戦七番勝負第3局(2019年7月19日13:30放送開始)
https://live2.nicovideo.jp/watch/lv326634979

第5期叡王戦七番勝負第4局(2019年7月19日18:30放送開始)
https://live2.nicovideo.jp/watch/lv326635133

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