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「台湾外交部も攻撃に加わっている」? 新型コロナをめぐるWHOと台湾の因縁とは

『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』より #1

2020/07/30

「チャイニーズ・ヘルス・オーガニゼイション」?

 日本でも麻生太郎財務相が「WHOではなくCHO(チャイニーズ・ヘルス・オーガニゼイション)という声がワンワン出た」と皮肉り、豪州のペイン外相は「米国と懸念の一部を共有する」「(中国とWHOのやりとりについて)検証が必要だ」と述べている。

 米国の拠出金は2018~2019年に約6億米ドルに達しており、WHO予算全体のなかで、分担金と拠出金をあわせて15%を占めている。もし米国が本当に脱退したら、WHOの運営そのものに大きな障害が生じるだろう。WHOと密接に協力している米国の疾病予防管理センター(CDC)などの協力も得にくくなる。WHOの危機は、2020年の国際問題の焦点であり続けるだろう。

 その発火点の一つが、WHOと台湾の対立であり、参加をめぐる数十年にわたる恩讐の歴史である。今回の新型コロナウイルスをめぐるWHO批判のスタート地点は、やはり2019年12月31日にあった。

台湾が大晦日にWHOに送ったメール

 2019年12月31日、台湾からWHOに一通の英文メールが送られた。

 メールを書いたのは台湾CDCの疫病情報センター主任の劉定萍(りゅう・ていへい)という女性だった。そこにはこのように書かれていた。

©iStock.com

「本日入手した新しい情報によれば、少なくとも7例の非典型的肺炎が中国・武漢で報告されている。現地の保健当局がメディアに答えたところでは、これらのケースはSARSではないとされている。サンプルは検査中であるが、すでに患者は隔離治療されている。この件について、我々と共有いただける関連情報があれば感謝する」

 このメールは、のちに台湾政府から公表されることになるのだが、その前段で米中の口論が起きていた。

 2020年3月23日、米国務省のモーガン・オルタガス報道官が、中国の華春瑩(か・しゅんえい)・外交部報道官のツイートに噛み付いた。

 華春瑩が、「中国は高病原性のCOVID-19について、伝染病の防御と治療のために法に従って対処した。WHOが言うように、中国は記録的速度で病原体を特定し、遺伝情報を世界と共有して感染対策に寄与した」と書き込んだことに対して、オルタガスが、「ナンセンス。あなたは高病原性というが、先月、あなた方の役人がCOVID-19を危険な病原体と呼んだWHOのレポートをブロックしたではないか」と反論した。

 これに対して、華春瑩が「武漢市当局は12月31日に通知を出している。口を開く前に状況を理解すべきでしょう」と皮肉った。