2018年の台湾への日本人旅客はおよそ200万人にのぼり、2009年と比べるとほぼ2倍に増加している。そんな友好関係を築き続けている隣国、台湾は2019年末からの新型コロナウイルス感染症への対策において、現在まで一定の抑え込みに成功している数少ない地域だ。
これからコロナ禍の第三波・第四波の訪れが予想される中、輸出業・観光業に経済を依存させている台湾は、どのような戦略をとるべきなのか。また、日本がこれまでの関係性を継続させ、与えられるものはあるのか。
台湾や香港の諸問題に積極的に切り込んでいるジャーナリスト
第三波、第四波への備え
台湾は、1月から2月にかけての新型コロナウイルスの中国からの第一波、3月から4月にかけての欧米など世界各国からの帰国者による第二波も、うまくしのぐことができたが、今後の第三波、第四波にどう対応するかという課題には向き合わなくてはならない。
台湾は大国ではなく、台湾経済は主に輸出によって成り立っている。台湾経済の域内総生産における輸出依存度は50%を超えており、日本や韓国などよりもはるかに高い。台湾が世界に売っているものは主に電子部品で、世界の大手メーカーから受注を受けて生産するOEMと呼ばれる受託生産が主力となっている。台湾には、ホンハイや台積電(TSMC)など、世界的にもトヨタレベルの規模の大型企業があるが、彼らは自社ブランドを持たず、効率的で高品質な物づくりを行うことで世界から受注を獲得して台湾経済を成り立たせている。
新型コロナウイルスによって世界経済が冷え込めば、高額な電子機器などは当然売れなくなり、台湾企業の受託も減るだろう。
台湾経済は、ホテル、レストラン、ショップなど観光業の占める割合も大きく、コロナ問題が起こるまでは順調に伸ばしていた海外観光客誘致も苦しく、すでに大型ホテルの倒産が起きているなどその屋台骨を揺るがしている。
自国マーケットが限定的だからこそ、世界とつながることで生き抜いてきた台湾経済にとって、世界とのリンクを中長期的にある程度切断せざるをえない新型コロナウイルスの問題は、ボディブローのようにジワジワと国力を削っていくだろう。
いかに制限の緩和を進めるかがカギ
台湾も他国の例に漏れず、現在、基本的に外国人は特別な理由がない限り、入国ができない。これまで見事な対応で感染を抑えてきているだけに、新たな感染源となりかねない外国人の入国には当然慎重になる。
5月下旬、台湾政府は6月からソーシャルディスタンス(社会的距離)を維持しながら、国内の交通移動の制限を取り払い、8月から台湾人の国内団体・個人旅行を開放し、マスクやソーシャルディスタンスの制限も、感染が広がっていなければという条件つきで緩めていくという。10月から外国人観光客の段階的開放を始めるとのプランも示した。
第二段階までは良くても、第三段階の外国人については容易に進まない点もあるだろう。中国は訪問者が出発する72時間以内に受けたPCR検査の陰性証明を求め、入国時にもPCR検査を行うという。
しかし、韓国のようにPCR検査を受けやすい国もあれば、日本のように受けにくい国もある。そのようなPCR検査を条件とすることが果たして可能なのか。台湾にとって関係の深い日本、米国、中国は感染状況が決して良い国ではないので、なおさら難しい判断が求められそうだ。いずれにせよ輸出・サービス業の依存度が高い台湾経済の体質を考えれば、国際社会との再接続はこれからの出口戦略に欠かせない課題だ。