ネット上のハラスメントや攻撃にはいくつかのパターンや共通点がある。中でも、近年、性差別や性被害、ジェンダーにまつわる発信をする女性に対するハラスメントが横行している。
具体的な被害の実態はどこまで深刻なのか。『足をどかしてくれませんか。 メディアは女たちの声を届けているか』(2019年12月24日発売、亜紀書房)より、『Business Insider Japan』の記者らが取材したケースを紹介する。
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頻発する品物の送りつけ被害
2019年2月。ネット上の嫌がらせから注文していない品物の送りつけ被害にあったという女性政治家や女性弁護士たちが記者会見を開いた。会見に参加した7人に共通していたのは、発言者が女性であったこと。そして性差別や性被害、ジェンダーにまつわる発言がきっかけだったのではないか、ということだ。
例えば、弁護士の太田啓子さんはその会見でこう発言している。
「品物の送りつけ被害に遭ったのは、性差別や性暴力について発言したり、メディアに出たりするようになった頃から。憲法について考える『憲法カフェ』などの取り組みをやっていた時にはこうした被害はありませんでした。
Twitterでも改憲や政権批判をするより、ジェンダーについて投稿するほうが多くのバッシングがきます。女性が性差別について物を言うと、やっぱり嫌な思いをするんだろうなと」
これは私(浜田)自身も経験がある。
これまで執拗にTwitterで絡まれたときは、財務省元事務次官のセクハラやフォトジャーナリストの広河隆一氏の性暴力について言及したときだった。特に広河氏の際には、彼が「リベラル」を標榜していただけにタチが悪い、政治的にはリベラルでもジェンダーの問題に関しては「別」と思っている男性は多い、という趣旨のことを書いたところ、それこそ「右」からも「左」からも攻撃された。
私自身、そういう言動が始まった途端、Twitterを全く見ないようにしてやり過ごすが、知人たちからは「大丈夫か」と心配されたから、よほどひどいことも書いてあったのだろう。私が朝日新聞にいたことから「アカヒ」と言われていると教えてくれた人もいた。
ネット上のハラスメントや攻撃にはいくつかのパターンや共通点がある。そしてこうした問題が放置される原因や救済措置へのハードルが非常に高い現実が、取材や自分たちの経験を通じて見えてきた。深刻なのは、一度ネット上でのハラスメント、暴力の対象になってしまえば、それから逃れる術が非常に限られており、精神的にも日常生活も大きなダメージを受けてしまうということだ。
具体的な被害の実態はどこまで深刻なのか。いくつかのケースから見てみよう。