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Case3 社会活動家

 同じようにTwitterでデマを流された仁藤夢乃さんも、匿名のアカウントによって大きな被害を被った1人だ。

 最初は元同級生と名乗る匿名のアカウントがきっかけだった。学生時代に仁藤さんにいじめられたという内容のTweetを執拗に繰り返し、それに呼応して仁藤さんを責めるTweetが溢れた。それらのつぶやきは約80ものまとめサイトに掲載されたほか、ウェブメディアの記事やYouTubeの動画としてアップされた。

「明らかなデマです。#MeTooのハッシュタグをつけて拡散され、『匿名の告発を推進してきたくせに』などと揶揄されたのもショックでした」

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 仁藤さんには身に覚えのないことだったが、攻撃はSNSにとどまらなかった。

 仁藤さんが代表を務める、暴力や性被害にあった女子中高生をサポートする一般社団法人「Colabo(コラボ)」の問い合わせフォームには、「いじめの説明責任をとれ」「そんな奴が社会活動するな」という意見が大量に届き、仁藤さんの講演会の主催者やColaboに助成金を出している団体には、妨害の電話がかかってきた。

 同様の嫌がらせは、Colaboの活動を始めた当初から続いてきたという。女子高生に性的サービスをさせる「JKビジネス」の問題を訴えれば、「売春するのは朝鮮人だけだ」「日本を辱めるために嘘をついている」「お前も在日だ」。児童ポルノに反対すれば、「男性差別主義者だ」「自分はホスト通いして男を買っているくせに」。そんな脅迫や差別、根拠のない誹謗中傷が大量にTwitterや団体のHPに寄せられた。

©iStock.com

 特にひどかったのは、2016年に性売買の当事者になった女子中高生の声を伝える「私たちは『買われた』展」を企画したときだ。1日で300件の誹謗中傷が届き、殺害予告やレイプ予告も複数あった。

 仁藤さんは少女たちの貧困や性被害の実態を伝えようと数多くの講演を行っているが、今は1人では会場に行けない状況だという。

 オンライン上のバッシングに共通するのは、声を上げる女性たちに対する暴力的な攻撃ということだ。長い時間をかけて少しずつ女性たちは自ら権利を獲得してきたが、その動きに対する反動、バックラッシュが顔の見えないオンラインという場で起きている。女性たちが声を上げる内容は女性、子どもに関するものが多い。

 電車で「子育て応援車両」を導入する活動をしている平本沙織さんも、その1人だ。平本さんは公共交通機関での子どもの安全な移動を求める団体「子どもの安全な移動を考えるパートナーズ」の発起人。自身が電車を使って子どもを保育園に連れて行く際に、電車で受けた冷たい反応を変えたいと団体を立ち上げた。

 しかし、団体の活動を始めた当初から、ネット上で平本さんに対する誹謗中傷が相次いだ、という。

「満員電車にベビーカーで乗るなんて非常識だ」

「子どもを危険にさらしている」

「電車に乗らず保育園に通える場所に引っ越せ」

 この問題が根深いのは、この中には同じ親、という立場の人も少なくなかったことだ。平本さんと同じような体験した親たちから、「自分も我慢したのに」という反応があったそうだ。