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女性が性差別についてSNSに書き込んだだけで品物送りつけ被害、脅迫、レイプ予告

止まらない「ネットミソジニー」の実態とは

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Case2 弁護士

 国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長で、性暴力やAV出演強要問題などに積極的に取り組んできた弁護士の伊藤和子さんは、自身もたびたびSNSで攻撃されてきた。女性の権利について投稿すると、非常に強い抵抗があるという。

「児童ポルノやAV強要問題などは特にそうですね。男性がこれまで楽しんできた文化を取り上げようとしているように見えるんでしょう。反応をみると、女性を性的に消費したり、差別や暴力の対象にしてきたりしたことに対する内省がないと感じます。激しいバッシングにあうことでSNSの投稿を控えるようになる女性も多く、とても悔しいです」(伊藤さん)

 伊藤さんは2017年に経済評論家の池田信夫氏にTwitterやブログでデマを流されたとして、名誉毀損で提訴。東京高裁は池田氏に計約114万円の損害賠償の支払いを命じた。

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「訴訟する前はネット上での名誉毀損を争う裁判は『どうせ負ける』『負けたときのダメージが大きい』という世間のイメージが強く、周囲にも心配されました。

 でもこうして勝ちましたし、勝訴後はネットでの攻撃はトーンダウンしたので、抑止力にもなるんだと思います。同じような悩みを抱えた女性がいたら、裁判を勧めたいです」(伊藤さん)

©iStock.com

 しかし、相手が匿名の場合はハードルが高い。伊藤さんは2018年に繰り返しデマを流し誹謗中傷していた匿名のTwitterアカウントに対し、発信者情報開示請求の仮処分申請を裁判所に申し立てた。仮処分が認められた場合は、IPアドレスというコンピュータに割り当てられた識別番号が開示され、それを元に日本のプロバイダに名前や住所を開示するよう訴えるのだ。

 とはいえ、結局、IPアドレスは分かったもののその先に進めず、個人は特定できなかったという。