昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

特集観る将棋、読む将棋

2020/07/23

――つまり、終盤が藤井聡太棋聖の強みともいえないと。

相崎 ただ、終盤で間違える率はトップクラスの中でも極めて低い。かつ、中盤力もあるから、相手からするとやりようがない印象です。最近は、中盤において、リードしている場合はその差の広げ方が、また逆の場合は差の詰め方が、より向上しているかなと思います。おそらく藤井さんに序盤で作戦負けしてから巻き返して勝った人ってほとんどいないと思うんですよ。

「空白期間」によって実力が大幅に上がった

 ちなみに相崎さんが直近で、藤井聡太棋聖の対局を観戦したのは、2020年2月18日に行われた王位リーグでの羽生善治九段との将棋。「イメージですが、羽生九段が普段以上に中盤を悲観的に見ていたような」という印象が残っているという。その後の緊急事態宣言により2カ月ほど対局はなかった時期が生じたが、その間に、実力が一段階、二段階上がったのではないかと指摘する。

君島 実は、似たような「空白期間」によって藤井さんの実力が大幅に上がったことは過去にもありました。藤井さんが三段に上がったときは、2015年後半の三段リーグが始まった直後で、次のリーグが始まるまで5カ月くらい奨励会での対局がなかったんですよ。そのときに師匠の杉本さん(昌隆八段)が、いろんな棋士と指す機会を設けたりして、結果的に三段リーグを一期抜けした。

©平松市聖/文藝春秋

――その期間が、藤井棋聖にとってよかったと。

君島 三段リーグを指す前のころは、突出して強いわけではなかったという話も聞きます。ですから三段リーグのときに強くなったのは、その前の指せない時期があったからなのかなと。こじつけかもしれませんが、少し今の状況と重なって見えますね。

顔がこわばっているように見えました

ーー君島さんは、藤井聡太棋聖にとって初めてのタイトル戦となったヒューリック杯棋聖戦の第1局で観戦記者を務めたそうですね。そのときはどのような印象でしたか。

君島 序盤は定跡形でしたが、戦いになってからは、藤井さんの間合いの取り方が普通じゃないなと感じました。それと終盤の踏み込み方が、あまり検討されていない手順で印象的でしたね。あと、緊張は感じました。

タイトル戦デビューとなったヒューリック杯棋聖戦第1局 提供:日本将棋連盟

――藤井さんの緊張を?

君島 終盤の王手が続いていたときですね。ミスが許されない場面でした。本人的には詰まないと思っていたはずですが、顔がこわばっているように見えました。今までもそういったことはあったかもしれませんが、間近で見ていたのでそう感じましたね。

 観戦記者ならではのことばである。

z