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特集観る将棋、読む将棋

藤井聡太棋聖には「羽生世代」に相当するライバルは存在するのか

将棋記者が目撃した、天才・藤井聡太の進化 #2

2020/07/23

 観戦記者・中継記者が感じる「藤井聡太のすごさ」。後編となる本稿では、初タイトルを手にした藤井聡太棋聖は今後どうなるのか、相崎修司、君島俊介、小島渉の記者三氏に現在地に対する感想とともに聞いていこう。

前編を読む)

「いつの間にか」というのが怖い

――いよいよ史上最年少のタイトルホルダー、藤井聡太棋聖が誕生しました。歴史的な一局となったヒューリック杯棋聖戦第4局は、どうご覧になりましたか。

君島俊介 第4局では、渡辺明棋聖が第2局で敗れた作戦を改良してきました。かなり複雑な応酬が続き、渡辺棋聖も十分戦える展開だったはずですが、いつの間にか藤井七段が有利になっていました。「いつの間にか」というのが怖いです。投了の局面を見ると藤井七段が渡辺棋聖の玉を左右から挟み撃ちにして、教科書通りの攻めなのですが、その過程はかなりマネしにくいものだと感じます。

相崎修司 あの将棋を勝つのは、やはり「持っている」のかなと感じましたね。

ヒューリック杯棋聖戦第4局は、歴史的な一局となった 代表撮影

小島渉 渡辺棋聖に狙い撃ちされても、藤井七段が盤面全体で揺さぶり、複雑な終盤を勝ち切ったのがアンビリバボーですね。渡辺明ブログの「負け方がどれも想像を超えてるので、もうなんなんだろうね、という感じです」に驚くと同時に、当日中にヒューリック杯棋聖戦を赤裸々に振り返ったことにトップ棋士としての責任を感じました。

久々に勝負術を見ました

――王位戦七番勝負でも2連勝と勢いに乗っています。

君島 木村一基王位の巧みな指し回しに藤井七段は苦戦に陥りましたが、中盤以降に勝負手を何回も繰り出しました。それによって、局面を複雑にし、相手にプレッシャーを与え、わずかなスキを突いて逆転に成功したと思います。リスクを負ってでも逆転を狙う、勝負師の面や勝負術が出た一戦だと感じました。

小島 藤井将棋は中盤から押し切ることが多いので、王位戦第2局で久々に勝負術を見ました。木村王位は出だし2連敗ですが、昨年の王位戦もそうでした。そこから踏ん張ってフルセットのすえに初タイトルをもぎ取ったので、引き続き七番勝負に注目しています

相崎 私は王位戦七番勝負では間近で観戦できる機会に恵まれたので、どのような将棋が見られるか、いま楽しみです。

王位戦第2局では劣勢を覆した「勝負術」が印象的だった 提供:日本将棋連盟

――藤井聡太棋聖の「現在地」については、どのような感想をお持ちですか。

小島 あの29連勝したときも、これほど早くタイトル戦の舞台に登場してくるとは、思っていませんでした。だって、いくら連勝してもトップを何人も倒さないとタイトル戦に出られないですからね。やっぱりトップに勝ち続けるのって、めっちゃ大変ですから。

――その壁はもっと厚いと。

小島 みなさん苦労されていますから。16歳でプロ入りして20歳のときにタイトル初挑戦を果たした豊島将之竜王・名人も、初めてタイトルを獲得したのは2018年、28歳になってからです。

プロデビュー後、29連勝を達成した藤井聡太四段 ©文藝春秋