その後、事実と異なる暗証番号のために預金の払戻しに失敗した犯人らは、グループ内で仲違いをはじめ、犯人の1人が減刑のために自首をしたことによって犯行は発覚し、他の2人も逮捕されました。
罪をなすりつけ合う犯人たち
2008年9月から始まった刑事裁判では、犠牲となった被害者数が1名であったとしても死刑が適用されるかが大きな焦点となりました。
当時はまだ、被害者やその遺族が法廷内で刑事裁判に参加できるという被害者参加制度は存在していません。そのため、利恵さんの母親である富美子さんは、被害者やその家族にとって余りにも少ない制度の枠組の中で刑事裁判に関わるほかありませんでした。それでも、富美子さんは法廷傍聴を続けられ、犯人らが互いに罪をなすりつけ合ったり、逮捕された原因を非難しあうといった醜い争いに直面しながらも、自らの想いを訴えるべく、ときには検察官側の証人として、ときには被害者遺族として法廷に立たれてきました。
また、裁判外においても、犯人らの極刑を求める署名活動を街頭やご自身のホームページ上で続けられました。自らの個人情報を明らかにして活動を続けられたため、ときには、見ず知らずの者が突然、自宅に訪れたこともあります。しかし、そういった心身に危険が及ぶ事態すら想定されるなかでも、娘の利恵さんの無念を晴らし、犯人らの極刑を望むという一心が、富美子さんの活動の原動力となっていたのです。
遺族の思いは退けられた
そして、その富美子さんの思いに多くの方々が賛同し、最終的には33万2806筆もの署名が集まりました。それらの署名は刑事裁判の中でも証拠として提出がなされ、裁判官にも届けられました。
2009年3月の第1審の地方裁判所では、自首をした被告人のみ無期懲役、他の2人の被告人には死刑の判決が下されました。その後、3人は控訴しましたが、死刑判決を受けていた被告人のうちの1人は、自ら控訴を取り下げたことにより死刑が確定しました。
その結果、第2審の高等裁判所では自首をした被告人ともう1人のみについて裁判が続けられることになったのですが、ここで第1審の判決が覆されてしまいます。
第2審の判決では、自首をした犯人だけでなく、もう1人の犯人もまた「犯罪傾向は進んでいない」「被害者は1名である」などを理由として無期懲役の判決が言い渡されました。
そして、最終的に最高裁判所にて2012年7月に無期懲役が確定しました。