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同じ死刑基準でも結論に大きな差

 今回の事件では、第1審・第2審ともに判決の中で、死刑適用の判断にあたって、いわゆる「永山基準」と同様の基準を用いることが明言されていました。ここで言う、死刑基準とは次のことを指します。

「犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえないと認められる場合には、死刑の選択も許されるものといわなければならない」

 このなかに出てくる「一般予防」とは、罪を犯した者を処罰することで、世間一般に警告して再び犯罪が発生しないよう戒める、いわゆる「見せしめ」的な考え方を指します。

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 このように第1審・第2審ともに、同じ死刑基準を採用すると明言していたにもかかわらず、結論に大きな差が生まれた理由は、「インターネットを通じて短期間の間に残虐な凶悪犯罪を計画して遂行した」という今回の事件の特徴的・象徴的な部分についての評価や、被害者数が1名であることについての評価について、第1審と第2審で考え方が分かれたことに大きな原因があるように思われます。

 まず、インターネットを通じて知り合った犯行グループによる犯罪という今回の事件の特徴的・象徴的な部分について見ていきたいと思います。

第一審では厳罰な処置が検討された

 第1審判決では、見ず知らずの者同士が虚勢をはったり、悪知恵を出し合うなどして互いの力を利用しあうことで、1人ではできない犯罪が遂行できるようになり、犯罪の凶悪化、巧妙化に繋がる危険性が高いと指摘しました。そして、今回の事件はまさに、犯罪の凶悪化・巧妙化に繋がる危険性が現実化した事件であると判断したのです。

 さらに、相互に素性を知らない匿名性の強い集団であるために、犯行グループが解消され、お互いに連絡手段を絶ってしまえば、犯人を発見し、逮捕することは極めて困難になることが予想されます。第1審ではこうした事態を考慮して、判決で「犯罪が模倣されるおそれも高く、社会の安全に与える影響も大きく、今後同様の犯罪の発生を防止するためにも、他の強盗殺人事件に比べて厳罰をもって臨む必要がある」ことが強調されました。