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貯金を守り通した母への思い

 でも、そんな娘の命を、大の男が3人がかりで奪ったのです。娘は、本当に惨い殺され方をしました。腕や紐で首を絞め、ガムテープを顔面に縦横と23周も巻き、レジ袋を頭からすっぽり被せ、首から顎にかけてガムテープを8周巻いて止め、既に痙攣の始まっている娘に対し、その頭に30回から40回ほどハンマーを振り下ろしたのです。

「殺さないって言ったじゃない……お願い助けて……死にたくない……お願い話を聞いて……」と、とぎれとぎれの絞り出すような最期の言葉を聞いても、「まだ生きてやがる」と行動はエスカレートするばかりでした。娘は3人がかりのために手足の自由を奪われ、抵抗もできない状態の中で虫けらのように殺されていきました。検察は生き埋めと同じだと言いました。死因は窒息死です。

 親として、子供をこのような形で亡くすことほど辛く苦しい事はありません。

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 娘は生前親しい人に、「一番の親不孝は親より先に死ぬ事だから、私は絶対にそんな事はしない」と言ったそうです。ですから薄れゆく意識の中で、ひとり遺していく私の事を心配していたのではないかと思うと胸が苦しくなります。

 こうしてあえて惨い内容を記したのは、「死刑反対」と軽々しく口に出して欲しくないからです。私が3人の死刑を望むのは当然のことです。皆様も、最愛の人が何の落ち度も関係もないのに、このような形で命を奪われたとしたら、同じ思いになるのではありませんか。それでも生きて償わせるとおっしゃるのでしょうか。

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 一方で、娘は、彼らのどんな脅迫にも屈しませんでした。語呂合わせでニクムワと読める2960という嘘の暗証番号を彼らに伝えたのです。狭い車の中で、自分よりずっと体格の大きい見知らぬ3人の男たちに囲まれ、手錠をかけられ、包丁で脅された状態で、嘘の暗証番号を選択した娘の心情を思うと、いたたまれない気持ちで一杯になります。

 神田はこの時の震える娘の状況を、友人に立ちあげてもらったブログで「ガッタガタのマグニチュード10」と表現しています。当然誰も、こんな状況で聞き出した番号が嘘の暗証番号だとは思いません。確認もせずにすぐに命を奪ったのです。

 私は、主人とマイホームを持つという約束をしていました。その事は娘も知っていました。分譲マンションのチラシや、家に関する番組があるとよく娘と一緒に見たものです。それは2人にとってとても楽しい時間でした。

 そして、亡くなった後に知りました。守り通したお金は、亡き主人との約束だったマイホームを持つという夢を、娘が叶えようとして貯めていたものだったということを。