「クソみたいな番組」ではなく……
上出 僕にとって企画は自分のコンプレックスの塊をボンッと出すみたいな感じなんです。お笑いもやってみたいけどセンスないし、ジャーナリズムを追求するほど社会のことを知らない。じゃあ、ヤバいところに行って飯を食うしかないって『ハイパー』が生まれた。自分にはこれしかねえ、みたいな。半分破れかぶれみたいなものが番組になった。
伊藤 ウンコみたいな企画ね。
佐久間 これ、伊藤さんと飲むたびに言われるんです。「ウンコみたいなもん作らなきゃダメだ」って。俺は毎回、目の前のツマミだけを見つめて、わかったふりしてる(笑)。
伊藤 俺だけが納得してるの? おかしいな。
佐久間 10年くらい付き合ってやっとわかった。番組には自分が噛み砕いたものが全部入ってるっていうのと、どうしようもなく出ちゃうものという2つのことが必要だという意味なんだって。
伊藤 そうそう、そういうこと!
佐久間 クソみたいな番組でいいってことじゃないんだよ(笑)。
濱谷 インプットとアウトプットをウンコで表したんだ。ああ、なるほど。そうやって聞くと結構名言ですね(笑)。
命削って撃ってくるみたいな社風
年次や役職に囚われず、フランクに語りあう4人の言葉には、自らの番組に対する愛情、テレビの持つ可能性への期待が滲んでいた。
そして、伊藤は今のテレビ界における「テレビ東京の存在理由」についても語ってくれた。
伊藤 テレビ東京が必要か? って言われたら必要ないと思うんです。でも、さっき上出が言った「破れかぶれ」じゃないですけど、魂の叫びのような番組がボーンって出るっていうのはエンターテイメントの幅を広げていると思いますね。大きく言えば、日本人の感情の幅を広げてたり深みを作ったりする。視聴者の感覚に影響を与えて、究極的には文化に貢献するのがテレビだと思う。そういう意味では、何をしてくるかわからないような、テレビ東京がなくなっちゃうと寂しくないですか? と。
今でも忘れられないけど、入社してすぐに先輩から「企画を出さない奴は死んでるのと一緒」「企画書は億の金を生むから命を削って書け」って言われたんですよ。「死」とか「命」とか、怖えな、とも思ったけど、なんとなくテレビ東京の人にはそういう認識がある。最下位だからこそ、ギリギリの感性で、怒られるくらいじゃなきゃダメなんだという遺伝子というか。そういう命削って撃ってくるみたいな社風は大切にしていかなきゃいけないと思います。
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他にも、テレ東で個性的な番組企画が生まれる理由、各プロデューサーの企画の立て方、視聴率が取れなかった番組とどう向き合うか、テレ東らしさとは何か、そしてコロナ禍でテレビはどう変わるのかなど、プロデューサーたちが忖度なく自由に語り合う「テレビ東京だけがなぜ面白いのか」は、「文藝春秋」8月号及び「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
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テレビ東京だけがなぜ面白いのか