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西村監督辞任……認めよう、今年のオリックスは弱い。しかし、“弱いからこそ”見たいものがある

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/08/21

 長かった梅雨が終わると、突然の猛暑。連日40度に迫る強烈な暑さが続いている。新型コロナの流行は収束の気配すらなく、にも拘わらず、春の「緊急避難宣言」の余波を受けて、短くなった夏休みを終えた子供たちは満員電車に学校へと向かう。「一体これからどうなっていくのか」。社会に不安が広がる中、内閣府は、2020年第二四半期の経済成長率を年率換算で過去最悪のマイナス27.8%と発表した。先の見通せない状況が続く中、重苦しい状況が続いている。

勝負の場から撤退するのは、勝負に参加するよりも遥かに難しい

 さて、日本社会以上に大きな不安が広がっているのは、オリックス・バファローズの本拠地「京セラドーム」である。7月の一時期、「首位迄」僅か3ゲーム差に迫ったこのチームは、その後敗戦に敗戦を重ね、現在「5位迄」7ゲーム差の最下位に低迷している。因みに8月21日現在、パ・リーグで借金を抱えているのは、5位の西武の3と6位のオリックスの17だけである。極端な場合、現在展開中の西武との6連戦の展開次第では、パ・リーグの借金を一人ですべてしょい込むという、事態にすらなりかねない。正に皆に借金を作って勝ち星を一人で供給している事態であり、「パ・リーグの日本銀行」と呼ばれても不思議ではない状況だ。

 ここまで来たらもはや認めるしかない。今年のオリックスは弱い。長年このチームを見てきた自分が言うのだから間違いない。考えてみれば当たり前だ。ドラフトの上位で指名したのは高校生だったし、新外国人選手で合格点を出せそうなはヒギンズくらいである。楽天に去ったロメロを見るたびに、心の中では止めておこうと思っているのに、「ロメロどうしてあなたはロメロなの」と呟いてしまうくらい、オリックスファンは病んでいる。ロドリゲスに檄を飛ばす者はいるが、ジョーンズの前で声を上げる者は最早少ない。トレードで獲得した選手はおらず、エースの山岡は依然として戦列を離れている。夏休みに勉強しなかった受験生と同じで、プラス要素が何もないのだから、成績が上がる筈がない。正直、辛くなって耐えきれなくなった吉田正尚と山本由伸が、試合後の球場の窓ガラスを壊して回って、盗んだバイクで舞洲に走り出しても、同情できる自信が自分にはある。何なら一緒に参加しても良いと思うくらいだ。いや、参加させてくれ。

8月20日現在、借金16のオリックス

 そして人はここで時に間違いを犯す。どうせ負けが見えているなら、この場を若手が経験を積む為の場にしよう、とするのである。しかし、ただでさえ負けが混んでいる時に、まだ十分な自信を持っていない若手に、やみくもに「チャンス」を与えるのは必ずしも良い案ではない。不調の打線の援護が期待できず、勝ち星がつきにくい状況の中、若手の投手に多くを押し付けるのは過酷すぎる。打線についても同じことが言える。ただでさえ、得点圏打率の低い中、プレッシャーのかかる場面で若手を使っても、未だ十分な実力の伴っていない彼らの成績は次第に降下し、やがては自信を喪失することになる。そしてそれでは彼らの貴重な才能を押しつぶしているだけであり、育てる事にはならない。だからこそ多くの業界で、強い「チーム」でこそ若手が育ち、弱い「チーム」では育たない。人が自らに自信をつける為には「勝つ」機会を与えられなければならないからである。