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西村監督辞任……認めよう、今年のオリックスは弱い。しかし、“弱いからこそ”見たいものがある

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/08/21
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 そして今、絶望的な低迷の中、首脳陣は交代し、チームは新たな方向性を探すべき時期に差し掛かっている。だからこそ、ここでもう一度方針を展開し、プレッシャーに強く、簡単には自信を喪失しない、多くの経験を積んだ中堅・ベテランの選手をもっと積極的に起用する事を勧めたい。そしてそれにより、もう一度チームの軸を立て直し、若手の負担を軽くするのである。確かに、彼らにはこれ以上の大きな伸び代はないかもしれず、劇的に成績が上がる事もないかもしれない。しかし、これまでこの球団で ― 不幸にして ― 多くの逆境に耐えてきた彼らは、チームが連敗に沈んだ時、どうすればいいか知っている筈だ。吉田正尚27歳、山岡泰輔24歳、そして山本由伸22歳。主力が若いこのチームだからこそ、彼らを支える中堅・ベテランの役割がどうしても重要だ。

「弱いから」若手に機会を与えるのでは駄目だ

 そしてもっと大事な事がある。もし今の様な状況で、彼らを使わないのなら、チームは何のために彼等、中堅・ベテラン選手を雇っているのか。杉本や松井佑や西野や白崎、後藤 - 選手生活の半ばを過ぎ、出場の機会に飢えている彼等と競わせてこそ、太田や西浦や宗は本当に自信をつける事ができるのではないか。そしてファンは彼ら、中堅・ベテランがグラウンドでもう一度はつらつとした姿を見せてくれることを望んでいる。

「弱いから」若手に機会を与えるのでは駄目だ。「弱くても」そして「弱いからこそ」若手にはより厳しい競争を課すべきであり、その為には中堅・ベテラン選手の奮起、と彼らにもう一度機会を与えるベンチの決断が必要である。敵は相手チームよりも寧ろポジションを奪い合う見方にこそある。そんなギラギラした雰囲気作りが重要だ。

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 そして最後に言おう。俺たちは「消化試合」や「捨て試合」、更には若手の「育成試合」を見に来ているのではない。極点な事を言えば、試合に負けたって構わない。選手達の真剣な競争とプレーを見に来ているのだ。「弱いから」こそ選手もベンチもモチベーションを保つのは難しいだろう。でも、それを保ってこそのプロではないか。「弱いから」こそより多くの選出に出場の機会がある。そんな貴重な出場のチャンスを巡って争い合う、厳しい競争をこそ球場で見たいと思う。中嶋新監督にそんなチームを是非作って欲しい。

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