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「カートゥッ!」インパクト大の歌詞に女性ファン熱狂 売れるガールズグループ、日韓の違い

BLACKPINK、MAMAMOO……「ガールクラッシュ」化が止まらない

2020/07/27
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「カートゥッ!」唾を吐くセンセーショナルな歌詞

 現在「ガールクラッシュ」の代名詞とも言えるグループがMAMAMOOだ。正式デビューは2014年の4人組。最初から注目を浴びたグループではない。新人らしいフレッシュさ、未熟な可愛さを一切感じさせなかった故かもしれない。しかし、堂々とした振る舞いとパフォーマンス、成熟した雰囲気が後々の「強み」となってゆく。

 彼女たちがブレイクしたのは活動開始から5年目の2019年末、2ndフルアルバムのメイン曲「HIP」。テーマは「人の視線を意識しない人生、自分が一番自分らしくなれる人生」。

 中でもグループの象徴ともいえるメンバー・ファサの「世界にあなたは一人だけ、なのになぜ自分の顔に唾を吐くの、カートゥッ(唾を吐く擬音)」と歌いながら唾を吐くような振り付けはセンセーショナルであった。SNSやYouTube上ではファサが「カートゥッ」を歌う場面のコンピレーションが多数掲載され、ライブ映像を見ると大勢のファンたちが「カートゥッ」と合いの手を入れる様子を見ることができる。

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「HIP」MV内の唾を吐く歌詞のシーン


 ファサにはこんなエピソードがある。「デビュー前に受けたオーディションで、審査員に言われた。君は個性もあって歌も上手い、でも太ってて可愛くないって。悔しくて一晩中泣いた。でもあるアーティストのライブ映像を見て、こう思い直した。もし私がこの時代の“美の基準”ってやつに当てはまっていないのなら、私が別の基準になる」

 女性歌手はどんなに才能があっても、可愛くなければ意味がないーーそんなルッキズムと女性蔑視に対し彼女が中指を立てるのは、ポーズではなく実体験から生まれた信念からだ。コンセプトとしてカッコよく振る舞うのではなく、ありのままにパフォーマンスをしていたら結果的に「ガールクラッシュ」と呼ばれてしまった、と言った方が正しいかもしれない。

 

 ちなみにファサが「可愛くない」と言われ泣いた夜、勇気をくれたアーティストはビヨンセだったという。約20年前にDestiny’s Childが女性の自立について歌い、支持を集めたことを思い返すとなかなか感慨深い。かつてのビヨンセが訴えたメッセージは今も、K-POPを通じて世界へ発信され続けている。