文春オンライン

「右派」と名指された人々が砂漠で次々と餓死……中国共産党による「反右派闘争」とは

『死霊魂』ワン・ビン(映画監督インタビュー)

2020/08/06
note

私はただ真実を語りたいのです

――本作は虐待から生き延びた人々の証言から成るドキュメンタリーということで、やはりクロード・ランズマン監督の『SHOAH ショア』(1985年)が頭をよぎるのですが、何か意識された部分はありますか?

ワン・ビン 『SHOAH ショア』はもちろん見たことがありますが、私の作品よりもずっと素晴らしい作品だと思いますよ(笑)。ランズマン監督とは実際お会いしたこともないし、映画について話をしたこともありませんが、彼の映画と私の映画との間には大きな違いがあると思います。『SHOAH ショア』は、社会的な環境という意味で、私よりもずっと自由に撮れている作品ですね。

――『死霊魂』では、環境における不自由さを感じていたということですか?

ADVERTISEMENT

ワン・ビン そうですね。取材のたびに非常に慎重にハラハラしながら撮っていました。ランズマン監督は、撮影のテーマや対象に彼自身が深く入り込みながら撮っていますが、『死霊魂』は、もっと慎重に撮影しなければいけない状況に置かれていました。『SHOAH ショア』に見られる撮影の自由度が、私の場合にはそもそもなかったということです。

――中国では、現在も「反右派闘争」について口にするのはタブーだと捉えていいのでしょうか。

ワン・ビン そう言えると思います。

――『死霊魂』は中国での公開はまだされていませんが、今後も難しいとお考えですか。

ワン・ビン ええ、とても上映はできないでしょうね。

――監督はこの映画によって中国の過去の歴史を告発しているとも取れるわけですが、現在の政府に対して挑むといった意図もあるのでしょうか。

ワン・ビン 映画でもって何かを告発したり、批判につなげるつもりはありません。映画に、映画以外の目的を持たせることはしたくない。過去の歴史を見つめ実際に起きたことをきちんと語る。それが本作の大きな目的です。映画によって何をしたいかと問われれば、私はただ真実を語りたいのです。

王兵/1967年、中国陝西省西安生まれ。2003年、廃れゆく工業地帯・鉄西区を撮影した9時間を超えるドキュメンタリー『鉄西区』で国際的な注目を浴びる。監督作に『三姉妹〜雲南の子』『収容病棟』など。

INFORMATION

『死霊魂』
8月1日より、シアター・イメージフォーラム(渋谷)で公開
http://moviola.jp/deadsouls/

「右派」と名指された人々が砂漠で次々と餓死……中国共産党による「反右派闘争」とは

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー