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家族と家と天皇制を知る5冊
【1】青い眼がほしい(トニ・モリスン/大社淑子=訳)
両親と二人の子どもと大きな家——アメリカの標準的な家族を描く書き出しは、しかし、次のページで見事なまでに破壊される。その手法をうまく表現できない。「普通の家族なんてどこにもない」という作家の実験的な試みは、ぜひご自分でご覧になって欲しい。ハヤカワepi文庫 860円+税
【2】非道、行ずべからず(松井今朝子)
歌舞伎の家のお話である。稀代の名優・三代目荻野沢之丞が兄弟のいずれに名跡を継がせるか、巷では話題となっていた。ネタバレになるのでこれ以上は控えるが、歌舞伎の「家の技」が決して血縁のみによって承継されてきたわけではないことがよく理解できるだろう。集英社文庫 900円+税
【3】私という運命について(白石一文)
雇用機会均等法第一世代の女性が運命の男性と出会い、結婚を通して彼の「家」に組み込まれていく。「家制度」なる価値観は現代にも息づいていると分かる。ところどころカチンとくる表現が、逆に「保守的な男の視点」を通して見た世界を浮かび上がらせ興味深い。角川文庫 720円+税